今回の記事も、相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
ではさっそくですが、前回の記事で戸籍を調査し法定相続人が確定するまで説明していきました。次は被相続人にどのような財産があるのかを確認していく必要があります。財産といってもさまざまあり、その種類によって調査する方法が変わってきます。主な相続財産といえばプラスの財産(不動産、預貯金財産、生命保険等)とマイナスの財産(借金)があります。今回の記事では銀行預貯金について調査する方法をご紹介します。
この記事を読むことで被相続人の銀行預貯金の有無と残高を知ることが出来ます。
相続で重要な預貯金財産
まず誰しもが持っていると言っても過言ではない銀行口座の預貯金財産の探し方やポイントについて説明します。
被相続人の通帳を探す
まず、被相続人が持っていた預金口座を把握することから始めましょう。遺言書や財産目録などで分からない場合は、キャッシュカードや通帳、金融機関からの郵便物やメールなどから取引のあった金融機関を特定しましょう。
残高証明書を取り寄せる
預貯金が存在する可能性のある金融機関が分れば、残高証明書を取り寄せることで、どれだけの預金が残っているかを調べることが出来ます。残高証明書は「相続開始時(死亡時)の解約価額(既経過利息込み)」の金額を知る必要があります。銀行などの窓口で「家族が亡くなり相続を開始したので、残高を知りたい」と伝えれば残高証明書を出してくれます。
この時に、1つの銀行の通帳が発見されたときは、そこに記載された支店だけでなく、取引支店すべてに存在する口座の残高証明書を要求するようにする必要があります。これを「全店照会」と呼びます。
他の銀行に全店照会する
その他、開設していた銀行口座がある場合には全店照会することも必要になります。ただ、全店照会には費用がかかるため、むやみやたらとすることはお勧めしません。全店照会は金融機関の管理する全ての口座を探し出す方法です。
全店照会は、1つの支店に問い合わせることで実行することができます。
全店照会の際の必要書類は、①被相続人の亡くなったことが分かる戸籍②被相続人と相続人の関係の分かる戸籍③相続人の身分証明書④(代理人が請求する場合)委任状です。
また、口座の有無の問い合わせには印鑑証明書の添付を要求する金融機関もあるので、事前に問い合せをした方が良いでしょう。
全店照会でわかるのは、預貯金口座の存在のみなので、その後に更に残高証明書、取引履歴の開示を求める必要があります。口座の有無の問い合わせでは、開設時から死亡までの間に住所や氏名を変更している場合には、その変更の履歴がわかる住民票や戸籍の附票を求められることがありますので注意しましょう。
なお、休眠預金の場合は、被相続人の住所氏名だけでは調べられない場合がほとんどで、その休眠預金の支店、口座の種別、口座番号が必要になってしまいます。
休眠口座とは
10年間入出金がない口座は「休眠口座」になる可能性があります。休眠口座になっても預金を引き出すことはできますが、窓口で手続きが必要になります。そのほか、金融機関によっては10年より短い期間で取引停止になる場合や、口座管理手数料が生じるケースもあります。
口座凍結
金融機関が口座名義人の死亡を知る主なきっかけは、遺族からの連絡や問い合わせです。死亡届を役所に提出したことで自動的に預金口座が凍結される、というわけではありません。
銀行や信託銀行などの金融機関は口座名義人の死亡を知ると、その預金口座を凍結します。
これは故人の預金口座を凍結することによって、口座の名義人である被相続人が死亡後、相続手続きがおこなわれる前に口座から預金が引き出されるなど、後々大きなトラブルに発展する可能性を防ぐためです。
また、口座名義人のいない口座が犯罪なとに利用されることを防ぐことや、銀行が故人にお金を貸し出していた場合など、債務整理がおこなわれた際には貸し倒れを防ぐといった理由もあります。
預金口座が凍結されると、原則、出金・入金・振込・振替すべての手続きができなくなります。
ご遺族の方が預金を下ろそうとしても下ろすことはできません。
下ろすだけではなく、給与などの振込入金、クレジットカードや公共料金の自動引き落しなどもできなくなるので注意が必要です。
凍結を解除するためには、預貯金口座を相続することになった人が、金融機関で所定の手続きをしなければなりません。
亡くなった人が遺言書を残していれば、相続する人が金融機関で口座の残高の払い戻しや名義変更の手続きをすることで凍結は解除されます。
遺言書がないときは、手続きをする前に相続人同士による話し合い(遺産分割協議)をして誰が預貯金を相続するのかを決める必要があります。
まとめ
今回は預貯金財産の把握方法と口座預貯金の口座凍結について説明しました。トラブルを防ぐために口座凍結されますが、被相続人の口座で毎月の支払をしていた相続人や口座凍結が解除できないと相続財産がいつまで経っても引き出せないといったことになります。次回は口座凍結解除の方法について説明していきたいと思います。
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