【就労B型】安易な定員増は危険?3.3㎡基準と消防法の落とし穴

こんにちは。 大阪で、障害福祉サービス専門の行政書士事務所開業に向けて準備中の「くまくま相談事務所」です。
事業が軌道に乗ってくると、相談支援専門員から「あそこは良い事業所だ」と評判になり、利用希望者が次々と紹介されるようになります。 「今の定員(20名)はいっぱいだけど、断るのはもったいない…」 「定員を25名、30名に増やしたい!」これは経営者として非常に喜ばしい悩みです。 しかし、ここで「役所に変更届を出すだけでしょ?」と軽く考えていると、痛い目を見ます。実は、定員変更は「新規指定」と同じくらい、厳しい設備基準のチェックが入るのです。 今回は、知らずに進めると「数百万円の損」をしかねない、定員増の3つの落とし穴を解説します。
この記事を読んでわかること
・【面積】 定員を1人増やすために必要な「訓練室」の広さは?
・【消防】 定員増で「スプリンクラー設置義務」が発生する境界線
・【人員】 利用者が増えても、今のスタッフ数で回せるか?
「ただの数字変更」ではありません!申請前に知っておくべきリスク

「定員を20名から30名に増やしたい」 そう考えたとき、多くの経営者様は「役所に変更届を1枚出せば終わり」と思われがちです。
しかし、福祉事業において定員を増やすことは、単なる書類上の手続きではありません。 建物(ハード面)と運営体制(ソフト面)の両方を、新しい定員数に合わせて「再適合」させる、いわば「第2の開業」とも言える大きな変更なのです。
もし、ここを甘く見て見切り発車してしまうと、 「リフォームが終わった後に、壁を壊してやり直しになった」 「消防設備だけで数百万円の追加請求が来た」 といった、取り返しのつかない事態になりかねません。
では、具体的にどこでつまづくのか? 多くの事業所が直面する、絶対に避けて通れない「3つの落とし穴」について詳しく解説します。
落とし穴①:魔法の数字「3.3㎡」の壁(設備基準)
障害者総合支援法には、以下の設備基準があります。
訓練・作業室の床面積は、利用者1人当たり3.3㎡以上必要である (※自治体によっては3.0㎡等の緩和措置がある場合も、内法寸法での計測が原則)
例えば、現在の定員が20名の場合、訓練室の広さは最低でも「66㎡」必要です。 これを25名に増やしたい場合、「82.5㎡」が必要になります。
【ここがポイント】
・「事務所」や「相談室」「更衣室」は含めません。 あくまで「訓練・作業に使うスペース」だけです。
・「うちは広いから大丈夫」と思っていても、実際に測り直すと、柱の出っ張りや固定棚の分が引かれ、「あと0.5㎡足りない!」というケースが多発します。
面積が足りない場合、壁を壊して事務所を狭くするなどの工事が必要になります。
落とし穴②:消防法という「高額出費」の罠
これが最も怖い落とし穴です。 定員を増やすということは、「災害時に避難させる人数が増える」ことを意味します。そのため、消防署のチェックが再び入ります。
特に注意が必要なのが、以下のラインです。
- 誘導灯・火災報知器の基準が変わる 面積や部屋の使い方が変わると、高機能な感知器への交換を求められることがあります。
- 防火管理者の選任 収容人員(利用者+職員)が一定数を超えると、防火管理者の資格を持った人を置く義務が発生します。
- スプリンクラー設置義務(要注意!) 建物の構造や延床面積によっては、定員増をきっかけにスプリンクラー等の設置義務が生じる可能性があります。これには数百万円〜一千万円規模の工事費がかかることもあります。
「定員を5名増やして売上を上げるつもりが、消防設備工事で利益が吹き飛んだ」 とならないよう、必ず事前に管轄の消防署へ事前相談に行く必要があります。
落とし穴③:人員配置と報酬単価のバランス
最後は「ヒト」と「お金」の問題です。 定員を増やすと、配置すべき職員の数も変わります。
- 人員基準(10:1): 職員2名 → 3名への増員が必須。
- 報酬単価の区分: 就労B型の基本報酬は「定員規模」によって単価が変わります。
- 定員20名以下:単価が高い
- 定員21〜40名:単価が少し安くなる
定員を増やすと、一人当たりの報酬単価は下がります。 「利用者は増えたのに、人件費も増えて、単価も下がったので、結局利益が変わらなかった(現場が忙しくなっただけ)」という失敗もよくあります。
事前に「定員増後の収支シミュレーション」を行い、本当に利益が出るのかを計算しておくことが不可欠です。
【実務編】定員変更の手続きフローと提出期限

「よし、落とし穴はクリアした。じゃあ変更届を出そう!」 そう思った方、ちょっと待ってください。定員の変更は、住所変更などの簡単な届出とは違い、「事前協議」が必要な自治体がほとんどです。
大阪府下の多くの自治体では、以下のスケジュールで動く必要があります。 (例:4月1日から定員を増やしたい場合)
いきなり書類を出すのではなく、まずは指定権者へ相談に行きます。 「図面」や「人員体制案」を持参し、3.3㎡基準や人員配置に問題がないか、担当者の事前チェックを受けます。 ※ここで「工事が必要」と言われることもあるため、余裕を持って動く必要があります。
建物の使用開始届や、防火対象物使用開始届などの手続きを行います。 必要であれば消防士による現地検査が行われ、「検査済証」などが発行されます。これがないと、役所は変更を認めてくれません。
多くの自治体では、「変更月の前月15日」を締め切りとしています。 4月1日から定員を増やしたいなら、3月15日までに「消防の許可」も含めた全ての書類を揃えて提出しなければなりません。
【主な必要書類】
- 変更届出書
- 運営規程の変更案(定員数を書き換えたもの)
- 平面図(求積図:面積の計算式が入ったもの)
- 設備の写真
- 従業者の勤務体制一覧表(増員後のシフト表)
注意:1日でも遅れると翌月回し 役所は締め切りに非常に厳格です。3月16日に提出すると、定員増が認められるのは「5月1日」になってしまい、丸々1ヶ月分の売上チャンスを逃すことになります。
よくある質問(Q&A)

利用者店員増加の際に起こるよくある質問をまとめました。
まとめ:変更届は「工事の前」にご相談を

いかかでしたか?定員を増やすだけなのに意外な落とし穴があったと思います。そならないためにも、以下の3点を確認しておきましょう。
- 図面チェック: 面積基準(3.3㎡)を満たしているか?
- 消防確認: 追加の設備投資が必要か?
- 収支試算: 人員配置と単価変動を含めて、利益が出るか?
「定員を増やしたい」 そう思ったら、リフォーム業者に電話する前に、まずは指定権者や専門家にご相談ください。




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