就労継続支援A型事業所の開業・立ち上げを検討している皆様の中には、「就労継続支援A型を開業するにはどのような準備が必要なの?」や「事業所を立ち上げるための条件や必要な資格は何?」などといったお悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は就労継続支援A型の特徴、開設に必要な知識をこの記事に詰め込みました。就労継続支援A型の立ち上げに役立てば幸いです。
この記事を読んで分かること
・就労支援継続A型の特徴がわかる
・就労継続支援A型の開設に必要な運営基準がわかる
・就労継続支援A型の開設の流れが分かる
就労継続支援A型事業とは

就労継続支援A型は、一般企業などへの就労が難しい65歳未満の障害や難病などのある人に対して、就労支援を行う障害福祉サービスの一つです。就労継続支援A型では、利用者と雇用契約を締結し、「生産活動」と呼ばれる就労機会を提供し、生産活動の対価として「給料」を支払います。
よくあるA型の仕事内容
- 食品など製造業の加工
- 縫製
- リサイクル
- 清掃
- 農業
- 組み立て
- ホテル清掃 など
就労継続支援A型事業の特徴
就労継続支援A型の大きな特徴は、難病や障害がある方が「雇用契約」を結び、ある程度のサポートを受けながら職場で働くことができるという点です。
この雇用契約を結んで働くということは、労働基準法などの労働関係法規等の適用を受ける「労働者」として扱われるということです。そのため就労継続支援A型で働く人は、最低賃金もしくはそれ以上の賃金を受け取ることができたり、労働基準法に定められた時間以上の労働を強いられたりしないなど、法律によって保護される立場になります。
就労継続支援A型の開業・立ち上げに必要な条件・資格

就労継続支援A型の経営者になるために持っていなければならない資格はありません。
ただし、就労継続支援A型を開業・運営していくためには、法人格を有した上で3つの条件を満たしている必要があります。
- 法人格を有している
- 人員基準を満たす
- 設備基準を満たす
- 運営基準を満たす
それぞれ詳しく解説していきます。
法人格を有している
就労継続支援A型は個人事業主では運営することができないため、株式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人といった法人格を取得する必要があります。
人員基準を満たす
就労継続支援A型の人員基準には、就労継続支援A型を開業・運営する上で必要な職種や配置人数が定められています。
人員基準を満たさないと事業所を開業することはできず、開業後も基準を満たし続ける必要があります。満たさない場合は報酬の減額や行政指導につながる場合もあるので注意が必要です。
| 職種 | 配置数 | 常勤要件 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 管理者 | 1名以上 | なし | |
| サービス管理責任者 | 1名以上 | あり | 60:1 |
| 生活支援員 | 1名以上 | どちらかが常勤 | 10:1 7.5:1 資格要件なし |
| 職業指導員 | 1名以上 |
※上記では、管理者とサビ管の兼務が可能ですので、最低定員であれば、3名で事業の開始が可能です。
上記の表のうち、職業指導員・生活支援員の配置数についてはあくまで最低限の水準になります。
就労継続支援A型における「人員配置区分」には、「7.5:1以上」「10:1以上」の2種類が存在するのでご注意ください。
条件3:設備基準を満たす
就労継続支援A型の設備基準には、就労継続支援A型を開業・運営するにあたって必要な設備が定められています。
開業前に行う指定申請では、設備・備品などの一覧表や建物の平面図などを通して、設備基準をクリアできているかどうかが審査されることになります。
就労継続支援A型の設備基準に定められている設備や備品は以下です。
| 要 件 | ||
|---|---|---|
| 訓練作業室 | サービス提供に支障のない広さを備えること。大阪市は利用者一人当たりの面積が約3.0㎡。3.3㎡の指定権者もあり。 | |
| 相談室 | プライバシーに配慮できる空間にすること | |
| 多目的室 | 相談室と兼務も可能 | |
| 洗面所・トイレ | トイレ手洗いと洗面所の兼用は不可 | |
| 事務室 | 鍵付き書庫 | |
上記の表は厚生労働省が定めている基本的な設備基準の内容や考え方になりますが、さらに細かいルールや条件については自治体によって違いが見られるので、物件を決める前に事前に確認できると安心です。
運営基準を満たす
就労継続支援A型を運営するためには、サービスの利用にあたっての留意事項や緊急時における対応方法などの運営規程を定めておく必要があります。
定めなければならない運営規程には以下のようなものがあります。
【事業の運営についての重要事項に関する運営規程】
- 事業の目的や運営の方針
- 従業員の職種や人数、職務の内容
- 営業日や営業時間
- サービス利用者から受領する費用の種類や金額
- サービスの利用にあたっての留意事項
- 緊急時などにおける対応方法
- 非常災害対策
- 事業の対象となる障害の種類
- 虐待防止のための措置
- その他運営に関する重要事項
就労継続支援A型の収益構造

就労継続支援A型では、サービス提供を行った対価として得る「障害福祉サービスの報酬」が主な収入になります。障害福祉サービスの報酬の構造は、
- 基本報酬
- 加算・減算
に分類することができます。
基本報酬に対して加算や減算の項目を加減した金額を算出し、負担割合に応じてサービス利用者の方と国保連(国民健康保険団体連合会)に対して請求を行うことになります。
まず「1.基本報酬」について、就労継続支援A型では厚生労働省が公表するスコア表に則って200点満点のスコアを算出します。
基本報酬
| 評 価 | 評価内容 | 判定スコア |
|---|---|---|
| ①労働時間 | 1日の平均労働時間により評価 | 5点~90点で評価 |
| ②生産活動 | 過去3年の生産活動収支により評価 | -20点~60点で評価 |
| ③多様な働き方 | 利用者が多様な働き方を実現できる制度の整備状況(就業規則等)により評価 | 0点~15点で評価 |
| ④支援力向上 | 職員の支援力向上の取組実績により評価 | 0点~15点で評価 |
| ⑤地域連携活動 | 地元企業と連携した高付加価値商品開発、施設外就労による働く場の確保などの連携した取組実績により評価 | 0点~10点で評価 |
| ⑥利用者の知識・能力向上 | 前年度において、就労継続支援A型事業所等が利用者の知識及び能力の向上に向けた支援を行い、当該支援の具体的な内容を記載した報告書を作成し、インターネットの利用その他の方法により公表している。 | 0~10点で評価 |
経営改善計画は、指定権者から経営改善計画の提出を求められ、指定された期日までに提出されていない場合に-50点となります。
就労継続支援A型「7.5:1」の場合の算定構造は下表のとおりです(「10:1」と定員61人以上は割愛させています)。
| 7.5:1 | 定員20人以下 | スコア170点以上 | ( 791単位) |
|---|---|---|---|
| スコア150点以上170点未満 | ( 733単位) | ||
| スコア130点以上150点未満 | ( 701単位) | ||
| スコア105点以上150点未満 | ( 666単位) | ||
| スコア80点以上105点未満 | ( 533単位) | ||
| スコア60点以上80点未満 | ( 419単位) | ||
| スコア60点未満 | ( 325単位) | ||
| 定員21人以上40人以下 | スコア170点以上 | ( 710単位) | |
| スコア150点以上170点未満 | ( 656単位) | ||
| スコア130点以上150点未満 | ( 626単位) | ||
| スコア105点以上150点未満 | ( 594単位) | ||
| スコア80点以上105点未満 | ( 474単位) | ||
| スコア60点以上80点未満 | ( 373単位) | ||
| スコア60点未満 | (288単位) |
主な加算・減算(一部抜粋)
次に「2.加算・減算」を基本報酬に足します。
| 初期加算 | 新規利用者が利用開始日から起算し30日以内に利用した場合に加算 |
| 利用者を自宅等に自動車で送迎した場合に加算 | 利用者を自宅等に自動車で送迎した場合に加算 |
| 福祉専門職員配置加算 | 良質な人材を確保するために資格等を持った福祉専門職員を配置等した場合に加算 |
| 欠席時対応加算 | 利用予定がある日に急病等でキャンセルがあった場合に利用を予定していた日の前々日、前日、当日にキャンセルの連絡があった場合に加算 |
| 賃金向上達成指導員等加配加算 | 賃金向上達成指導員を常勤換算1.0以上で配置し、賃金向上計画を作成し、キャリアアップの仕組みを講じた場合に加算 |
| 就労移行支援体制加算 | 就労継続支援A型を利用後、6か月以上、利用者が一般就労を継続した場合に加算 |
| 減 算 | 内 容 |
| サービス提供職員欠如減算、サービス管理責任者欠如減算 | サービス管理責任者、世話人、生活支援員が人員基準を満たすことができない場合に減算 |
| 個別支援計画未作成減算 | 個別支援計画の作成が行われていない場合に減算 |
| 定員超過減算 | 定員を一定割合で超過した場合減算 |
①基本報酬+②加算・減算×地区級地=算定報酬 となります。
就労継続支援A型の開設する流れ

就労継続支援A型を開設する際の流れを確認しましょう。
式会社、合同会社、一般社団法人、NPO法人といった法人格を取得します。
就労継続支援A型の開業には、法人設立費、物件準備にかかる費用、内装施工費、人件費などで、一般的に『900万円』ほどの資金が必要になります。開業に必要な資金を自分の貯蓄だけで準備できない場合は、金融機関などから借り入れを受けるケースが多いです。
就労継続支援A型の利用定員に対する面積や設備基準を満たすことができる物件を探します。
就労継続支援A型として「指定」を受けるためには、人員基準を満たさなければなりません。そのため、指定申請を行う前の段階で、求人を行い、従業員を採用しておく必要があります。
就労継続支援A型を開業するためには、「指定申請」という手続きを行い、管轄の自治体より許認可を得る必要があります。
就労継続支援A型を開業する際に必要な書類の例をご紹介します。
【就労継続支援A型の指定申請書類の例】
- 指定協議事前調査シート
- 事業計画書
- 支援方法・組織体制の内容
- 収支予算書
- 運営規定
- 事業所一覧
- 社会福祉施設等における耐震化状況調査票
- 社会保険及び労働保険の加入状況にかかる確認票
- 法人登記簿謄本
- 誓約書
自治体によって必要な書類が異なる場合もあるので、詳しくは管轄の自治体の窓口やホームページで確認するようにしましょう。
開業する日が決まったら、開業日に向けて、事業所紹介用のパンフレットや名刺、ホームページなどを作成し、サービスを利用する方々の獲得を目的にした集客を開始しましょう。
よくある質問

就労継続支援A型の特徴、開設についてよくある質問をまとめました。
まとめ

いかかでいたか?就労継続支援A型事業所の開業・立ち上げるための、「就労継続支援A型を開業するにはどのような準備が必要なの?」や「事業所を立ち上げるための条件や必要な資格は何?」などといったお悩みを少しで解決できたでしょうか。
今回の記事を読んで難しいなと感じた方は、相談できる専門家として障害福祉を専門としている行政書士もいますので、是非一度相談から始めてみてはどうでしょうか?

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