今回の記事も相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
前回は相続人に遺言書などに添付する財産目録について焦点を当てて解説しました。今回は遺言書で相続執行人に選ばれた時にどうしたらいいのかについて解説していきたいと思います。
相続とは急に訪れます。その相続が発生した際に遺言書をみたら、自分が遺言執行者に選ばれたとしたら、全く知識がないと困りますよね。
この記事を読むことで遺言執行者に選ばれたときにどのようなことをすればいいのか知ることができます。
遺言執行者とは
遺言執行とは、遺言者の死後に遺言の内容を実現する手続きをいいます。遺言執行者とは、その手続きを行う人物のことです。
遺言執行者は基本的には遺言書によって指定されます。遺言書で指定がない場合は、相続人、受遺者(遺贈を受けた人)全員で遺言内容の実現を目指します。しかし、遺言内容に不満を持つ相続人がいると遺言内容の実現は難しくなります。そのため、相続人や受遺者は家庭裁判所に遺言執行者の選任請求を行うことができます。
遺言執行者に選ばれると、遺言書に記載された内容を実現する手続きを行うことになります。遺言執行の手続きには、認知、推定相続人の廃除や取り消し、遺贈、祖先の祭祀主宰者の指定などが含まれます。
遺言執行者の業務
遺言執行者就任の通知
遺言執行者(遺言執行人)に選定され、本人が承諾した場合は遺言執行者就任通知を作成し、相続人全員に通知します。
相続財産の調査
被相続人の財産をすべて調査します。相続財産には預貯金や現金、不動産などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産を調査します。
相続人の範囲の確定
誰が相続人になるのか特定する業務であり、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本などを収集します。
財産目録の作成
相続財産の調査が終わった後は、財産目録を作成して相続人全員に送付します。なお、財産目録を送付する際には、遺言書の写しも添付しておきます。
預貯金口座解約
戸籍謄本などの必要書類がそろえば、預貯金口座の解約手続きを行います。普通預金の場合は解約し、解約金が相続人名義の口座へ振り込まれますが、定期預金の場合は名義を変更して満期まで継続させることもできます。
相続登記
相続財産に土地や建物がある場合、相続した人の名義に変更する必要があり、この手続きを相続登記、または所有権の移転登記といいます。手続きは法務局で行います。
その他の資産
必要に応じて公共料金の支払いに関する手続きや、株式や自動車の名義変更にも対応します。
業務の終了報告
すべての業務が終了した後は、相続人全員に書面で終了報告を行います。
遺言執行者の選任を拒否する方法
遺言執行者に指定されても就職するかどうかは自由です。拒否したい場合は、相続人にその旨を伝えましょう。
なお、相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に指定された者に対して、相当の期間を定めて、その期間内に就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。期間内に確答がなかったときは、就職を承諾したものとみなされるため注意が必要です。
遺言執行者の解任と辞任
相続人など利害関係人は遺言執行者の解任を裁判所に請求することができます。また遺言執行者は辞任の許可を裁判所に請求することも可能です。
遺言執行者を解任する方法
遺言執行者がその任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、家庭裁判所に解任を請求することができます。
遺言執行者を辞任する方法
遺言執行者はいったん就職を承諾した以上は、自由に辞任することはできません。辞任ができるのは「正当な事由」があるときに限られ、相続開始地を管轄する家庭裁判所に許可(遺言執行者辞任許可審判)を得る必要があります。
遺言執行者の辞任後の手続き
家庭裁判所から辞任の許可が出たら、まずは相続人全員に辞任の通知を行います。この際に家庭裁判所から送られてきた辞任の許可通知(辞任許可審判書)を添付します。さらに保管、管理していた書類などを相続人に引き渡し、遂行していた任務の途中経過を報告して引き継ぎをしなくてはいけません。
新たに遺言執行者を選任する
遺言執行者の辞任か解任後、遺言執行者は必要不可欠な存在ではありませんので、相続人全員が協力して遺言執行を行うことになります。
しかし、認知や推定相続人の廃除など遺言執行者しかできない内容が含まれる場合には、新たな遺言執行者の就職が必要となります。
遺言執行者を新たに選任する場合には、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらうことが可能です。遺言執行者選任の申立書を管轄の家庭裁判所に提出しましょう。
まとめ
遺言執行人に選ばれたらどのようなことをするのか、また選ばれても断る方法や新たに遺言執行人を選任する方法などについてご紹介しました。遺言執行人は相続財産調査や相続人の調査など、普段行わない業務を一遍に行わなければならないため、一定の知識が必要な仕事です。日頃の生活がある中で、このような業務が手つかずになりかねません。専門家に相談することもひとつだと思います。
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