【成年後見の身上保護とは】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は、成年後見制度の業務で身上保護(身上監護)について説明したいと思います。。今回の記事では後見業務で財産管理のイメージはあると思いますが、財産管理と同様に重要な身上保護業務について解説していきます。
今回の記事を読むことで成年後見業務の1つ、身上保護について知ることが出来ます。

後見人の義務

後見人には被後見人の財産を適切に管理するための義務が生じています。

善管注意義務

善管注意義務とは、「善良な管理者の注意義務」であり、成年後見人(保佐人、補助人)に課されています(民法644条、869条。保佐人につき876条の5、補助人につき876条の10)。
後見事務を遂行するにあたっては、「善良な管理者の注意」をもって行う義務があり、これを怠ると、義務違反による過失が認められることになります。
善管注意義務と対比される注意義務として、「自己の財産におけるのと同一の注意義務」というものがありますが、他人の財産を管理する後見人に求められる注意義務としては、「自己の財産におけるのと同一の注意」では足りないということになります。
善管注意義務を怠ったことにより、本人(被後見人)に損害を与えた場合は、損害賠償責任を負うことがあります。

身上配慮義務

民法では「成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」(858条)として、成年後見人の身上配慮義務を定めています(保佐人について876条の5に同様の規定。補助人については、876条の10で準用)。
成年後見人は、法定代理人として、医療や介護、福祉に関する契約をしたり、本人の財産を処分する権限を有していますが、その権限はあくまでも本人の利益のために付与されたものです。
そのため、これらの権限を行使するにあたっては、必ず本人の身上に配慮しなければならないとされています。

身上保護(身上監護)とは

後見人は本人の財産管理だけでなく身上保護(身上監護)業務も行います。身上保護とは、生活・療養看護に関する事務のことをいいます。身上監護には大きく分けて4つあります。

  • 1.住居に関する事項
  • 2.医療に関する事項
  • 3.介護サービスの利用
  • 4.日常生活の支援

居住に関すること

被後見人の住環境の確保や改善に関する業務であり、具体的には以下のような事務です。

・居住用不動産の購入・売却
・賃貸契約の締結・変更・解除
・居の新築・増改築・修繕に関する請負契約の締結・変更・解除

ただし、後見人に本人の居所を指定する権限はありません。居住環境の変化は本人の身上面に与える影響が極めて大きいため、成年後見人は居住用不動産の処分(売却・賃貸契約の解除)をするには家庭裁判所の許可を得る必要があります。任意後見人の場合も、契約で任意後見監督人の同意を必要とするように取り決めることがあります。

医療に関すること

具体的には以下のような事務です。

・医療契約の締結・変更・解除
・病院への入院に関する契約の締結・変更・解除
・医療費の支払い

ただし、後見人に医療行為の同意をする権限や、入院すること自体の決定権はありません。
また、病院から身元保証人・身元引受人になることを求められることがありますが、後見人にその義務はありませんしなるべきではありません。

介護サービスの利用

介護保険制度は、要介護・要支援状態の者に、そのニーズに応じた介護サービスを選択し、保健医療、福祉サービスに係る給付を行うことを目的とするものです。介護保険の給付には在宅で受けられる在宅サービス、施設において受けられる施設サービスがあります。
 (1)要介護等の認定申請
 介護保険によるサービスを受けるためには、申請により市区町村から要介護・要支援状態にあることの認定を受けなければならない。被後見人が介護保険によるサービスを受けるためには、後見人は、被後見人が要介護・要支援にあることの認定を受けるための申請を市区町村にします。
 (2)介護サービスの契約
 要介護・要支援にあることの認定を受けた者が介護サービスを受けるには、介護サービス事業者との間で介護契約を締結することになります。被後見人が要介護・要支援の認定を受けたら、後見人が被後見人のニーズ、資力に合った介護サービスを選択し、介護契約を締結します。
なお、後見人自らが介護を行う義務はありません。

日常生活の支援

具体的には以下のような事務です。

・生活費の送金
・日用品の購入、日用品以外の生活に必要な機器・物品の購入
・住宅の修繕・清掃

なお、後見人自らが実作業を行う義務はありません後見人の仕事は、これらを行ってくれるサービスを選定し契約を結ぶことです。

まとめ

成年後見人は本人の財産を管理するだけでなく、生活に必要な契約を本人に代わって行う権限があります。そこで重要なのが、善管注意義務と身上配慮義務です。被後見人の代理として契約を行いますが、必ず本人の身上に配慮し、本人の利益のために契約を行っていくことが大切です。

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