今回の記事も、相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
ではさっそくですが、今回は相続が発生した際に相続人を確定するために、戸籍で親族関係を調査することになります。そこで戸籍の読み方を知ることが重要となります。今回も前回に引き続き戸籍についての必要となる届出の種類について説明していきます。
戸籍法の種類
出生届 戸籍法第49条~59条
出生とは子供が生まれることです。
第四十九条 出生の届出は、十四日以内(国外で出生があつたときは、三箇月以内)にこれをしなければならない。
② 届書には、次の事項を記載しなければならない。
一 子の男女の別及び嫡出子又は嫡出でない子の別
二 出生の年月日時分及び場所
三 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
四 その他法務省令で定める事項
認知 戸籍法第60条~65条
認知とは嫡出でない子と父(又は母)との間に意思表示又は裁判所により親子関係を生じさせる制度をいいます。民法では父がその意思に基づいて自発的に認知する任意認知と子の認知の訴えによってなされる強制認知があります。
第六十条 認知をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 父が認知をする場合には、母の氏名及び本籍
二 死亡した子を認知する場合には、死亡の年月日並びにその直系卑属の氏名、出生の年月日及び本籍
第六十三条 認知の裁判が確定したときは、訴を提起した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
② 訴えを提起した者が前項の規定による届出をしないときは、その相手方は、裁判の謄本を添付して、認知の裁判が確定した旨を届け出ることができる。この場合には、同項後段の規定を準用する。
養子縁組 戸籍法66条~69条
養子縁組により縁組の当事者間で養親子関係が生じます。実の血族と親族関係を存続させたまま養子となります。
第六十六条 縁組をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第六十八条 民法第七百九十七条の規定によつて縁組の承諾をする場合には、届出は、その承諾をする者がこれをしなければならない。
養子離縁 戸籍法第70条~73条の2
第七十条 離縁をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第七十一条 民法第八百十一条第二項の規定によつて協議上の離縁をする場合には、届出は、その協議をする者がこれをしなければならない。
第七十三条 離縁又は離縁取消の裁判が確定した場合、判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
婚姻 戸籍法第74条~75条の2
婚姻とは結婚すること、及び結婚している状態をいいます。
第七十四条 婚姻をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 夫婦が称する氏
二 その他法務省令で定める事項
離婚 戸籍法第76条~77条の2
離婚とは婚姻の解消のことを言います。婚姻の解消はいったん完全有効に成立した婚姻が終了することです。つまり、婚姻が初めから瑕疵があることを理由とする婚姻の取消しとは、本質的に異なるものです。婚姻の取消原因には、当事者の死亡と離婚の2つがあります。
第七十六条 離婚をしようとする者は、左の事項を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
一 親権者と定められる当事者の氏名及びその親権に服する子の氏名
二 その他法務省令で定める事項
第七十七条 第六十三条の規定は、離婚又は離婚取消の裁判が確定した場合にこれを準用する。
第七十七条の二 民法第七百六十七条第二項(同法第七百七十一条において準用する場合を含む。)の規定によつて離婚の際に称していた氏を称しようとする者は、離婚の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
親権及び未成年者の後見 戸籍法第78条~85条
親権とは、親が未成年の子に対して持つ身分上・財産上の監督及び保護を内容とする権利義務のことです。
未成年後見は未成年者に対して親権を行う者がないとき、または親権を行う者が管理権を有しない時に開始します。未成年者に対して最後に親権を行う者は遺言で未成年後見人を指定することが出来ます。この遺言による指定がないときや未成年後見人が欠けたときは、本人または親族その他利害関係人の請求によって家庭裁判所が未成年後見人を選任します。
第七十八条 協議で親権者を定めようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第八十一条 後見の開始の届出は、未成年後見人が、その就職の日から十日以内に、これをしなければならない。
第八十二条 未成年後見人が死亡し、その地位を失つたことによつて未成年後見人が欠けたときは、後任者は、就職の日から十日以内に、未成年後見人が地位を失つた旨の届出をしなければならない。
死亡および失踪 戸籍法第86条~94条
死亡とは人が死ぬことです。
失踪は普通失踪と特別失踪があります。失踪宣告は、生死不明のものを死亡したものと擬制して法律関係を確定させるものです。失踪宣告がされると相続が発生し、配偶者が失踪宣告されると別の人と婚姻することができます。
普通失踪は特別失踪に該当しない行方不明で、7年間以上生死の不明が続いた場合に、利害関係者が家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをすることができます 失踪宣告がされると、行方不明となってから7年後に死亡したとみなされます。
特別失踪は従軍や船舶の沈没、その他の特別な危機にあって1年以上生死不明のものは、家庭裁判所の失踪宣告によって、特別な危機が去った時に死亡したものとみなされます。
第八十六条 死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
② 届書には、次の事項を記載し、診断書又は検案書を添付しなければならない。
一 死亡の年月日時分及び場所
二 その他法務省令で定める事項
第八十七条 次の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。ただし、順序にかかわらず届出をすることができる。
第一 同居の親族
第二 その他の同居者
第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人
② 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人及び任意後見受任者も、これをすることができる。
第八十八条 死亡の届出は、死亡地でこれをすることができる。
第九十四条 失踪宣告又は失踪宣告取消の裁判が確定した場合においてその裁判を請求した者は、裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
生存配偶者の復氏及び姻族関係の終了 戸籍法第95条~96条
第九十五条 婚姻前の氏に復しようとする者は、その旨を届け出なければならない。
第九十六条 姻族関係を終了させる意思を表示しようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
推定相続人の廃除 戸籍法第97条
被相続人の意思によって相続人の資格を失わせることができます。これを相続の廃除といいます。
第九十七条 推定相続人の廃除又は廃除取消の裁判が確定した場合において、その裁判を請求した者は裁判が確定した日から十日以内に、裁判の謄本を添附して、その旨を届け出なければならない。その届書には、裁判が確定した日を記載しなければならない。
入籍 戸籍法98条~99条
入籍とは、すでに存在する戸籍に入ることを指します。基本的に初婚の場合は親の戸籍に入っています。そのため、初婚同士は入籍ではなく婚姻(結婚)となります。入籍になるのは戸籍の筆頭者となる方がすでに親の戸籍から抜けて新しい戸籍を作っている場合をいいます
第九十八条 父又は母の氏を称しようとする者は、その父又は母の氏名及び本籍を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
② 父母の氏を称しようとする者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。
第九十九条 従前の氏に復しようとする者は、同条第一項から第三項までの規定によつて氏を改めた年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。
② 前項の者に配偶者がある場合には、配偶者とともに届け出なければならない。
分籍 戸籍法100条~101条
分籍とは、戸籍の筆頭者とその配偶者以外で成年に達している人が、在籍している戸籍から抜けて単独の戸籍を編製することです。
第百条 分籍をしようとする者は、その旨を届け出なければならない。
② 他の市町村に新本籍を定める場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
第百一条 分籍の届出は、分籍地でこれをすることができる。
国籍の得喪 戸籍法第102条~106条
第百二条 国籍法の規定によつて国籍を取得した場合の国籍取得の届出は、国籍を取得した者が、その取得の日から一箇月以内(その者がその日に国外に在るときは、三箇月以内)に、これをしなければならない。
② 届書には、次の事項を記載し、国籍取得を証すべき書面を添付しなければならない。
一 国籍取得の年月日
二 国籍取得の際に有していた外国の国籍
三 父母の氏名及び本籍、父又は母が外国人であるときは、その氏名及び国籍
四 配偶者の氏名及び本籍、配偶者が外国人であるときは、その氏名及び国籍
五 その他法務省令で定める事項
第百二条の二 帰化の届出は、帰化した者が、告示の日から一箇月以内に、これをしなければならない。この場合における届書の記載事項については、前条第二項の規定を準用する。
第百三条 国籍喪失の届出は、届出事件の本人、配偶者又は四親等内の親族が、国籍喪失の事実を知つた日から一箇月以内(届出をすべき者がその事実を知つた日に国外に在るときは、その日から三箇月以内)に、これをしなければならない。
② 届書には、次の事項を記載し、国籍喪失を証すべき書面を添付しなければならない。
一 国籍喪失の原因及び年月日
二 新たに外国の国籍を取得したときは、その国籍
氏の変更 戸籍法第107条~107条2項
第百七条 やむを得ない事由によつて氏を変更しようとするときは、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者は、家庭裁判所の許可を得て、その旨を届け出なければならない。
② 外国人と婚姻をした者がその氏を配偶者の称している氏に変更しようとするときは、その者は、その婚姻の日から六箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
③ 前項の規定によつて氏を変更した者が離婚、婚姻の取消し又は配偶者の死亡の日以後にその氏を変更の際に称していた氏に変更しようとするときは、その者は、その日から三箇月以内に限り、家庭裁判所の許可を得ないで、その旨を届け出ることができる。
転籍および就籍 戸籍法第108条~112条
転籍とは本籍地を移転させる手続きのことです。就籍とは本籍 をもたない者が 戸籍 につくり 戸籍を取得することです。
第百八条 転籍をしようとするときは、新本籍を届書に記載して、戸籍の筆頭に記載した者及びその配偶者が、その旨を届け出なければならない。
② 他の市町村に転籍をする場合には、戸籍の謄本を届書に添附しなければならない。
第百九条 転籍の届出は、転籍地でこれをすることができる。
第百十条 本籍を有しない者は、家庭裁判所の許可を得て、許可の日から十日以内に就籍の届出をしなければならない。
② 届書には、第十三条に掲げる事項の外、就籍許可の年月日を記載しなければならない。
まとめ
戸籍法の届出の種類が多いため、次回に引き続き説明していこうと思います。
今回の届出一覧は戸籍法の一部抜粋となっております。実際の戸籍法にはもっと細かな内容が記載されておりますので、ご覧いただきたいと思います。今回の抜粋は個人的に必要だと思われる部分だけを抜粋しているので注意してくださいね。
コメント