【成年後見人の終了する事由とは】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は成年後見人の業務の終了について解説します。前回ご紹介した、成年被後見人が死亡後の事務についてご紹介しましたが、成年被後見人の死亡も業務終了の要員の一つです。
今回の記事を読むことで成年後見制度が終了する事由をいくつかご紹介しますので、是非参考にしてください。

法定後見人の終了とは

法定後見の終了原因は、大きく分けて二つあります。 宣告、 成年被後見人等の死亡・失踪 成 あるいは事理弁識能力の回復による法定後見の開始の審判の取消しにより、 年後見制度の利用そのものの必要性がなくなるもの「絶対的終了」と、後任者が選任 されるため法定後見の終了とはなりませんが、成年後見人等の死亡、辞任、解任、欠 格事由該当により任務を終了するというもの「相対的終了」があります。

絶対的終了

成年被後見人の死亡

成年後見制度は、本人保護の制度です。本人が死亡した以上、成年後見制度を継続させる必要はありません。

審判の取消

成年被後見人の判断能力が回復し、後見を必要としない状況となった場合は、成年 被後見人自身または四親等以内の親族、成年後見人等の申立てにより、後見開始の審 判が取り消されます(民法第10条)。成年被後見人の判断能力が、保佐や補助のレベ ルに回復した場合は、保佐開始または補助開始の審判がされたとき(民法第876条の 2第1項、第876条の7第1項)も同様となります。

相対的終了

成年後見人等の死亡

成年後見人等が死亡した場合には、 成年被後見人とその成年後見人等との間の後見事務は終了します。この場合は、死亡した成年後見人等の相続人が終了の事務処理を行うこととなります。成年被後見人のために、申立てまたは職権により 家庭裁判所が後任の後見人を選任することになります。

後見人の辞任

成年後見人等は、正当な事由があるときには、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます。正当な理由とは、具体的事情ごとに判断されますが、成年後見人が高齢、疾病、遠隔地への居住などのために後見事務を適切に行えないようになった場合があげられます。辞任する成年後見人等は、後任の成年後見人等の選任を家庭裁判 所に申し入れます(民法第844条、第845条)

後見人の解任

成年後見人等に不正や著しい不法行為、その他後見人の任務に適しない事由がある ときには、家庭裁判所は職権により成年後見人等を解任することができます。解任される不正な行為とは他人の権利または利益を侵害して損害を与える違法な行為で損害賠償請求権の発生原因となる民法上の不法行為や刑法に触れる犯罪行為があげられます。その他、後見人の義務を果たさず、後見事務を怠った場合や成年後見人等の権利の濫用、家庭裁判所の求めに応じず報告を行わないなど著しい不行跡などがある場合には、家庭裁判所から解任されることがあります。この場合も、家庭裁判所は申立てまたは職権により後任の成年後見人等を選任します(複数後見の場合には、成年後見人等を新たに選任しないこともあります)。成年後見人の 解任は、欠格事由に該当(民法第847条)し、選任されているすべての案件の成年後見人等が解任され、成年後見人等になることができなくなります。

成年後見等の欠格事由

成年後見人等の欠格事由に該当する者としては、①未成年者、②裁判所で免ぜられ た法定代理人、保佐人または補助人、③破産者、④成年被後見人等に対して訴訟し、 またはした者ならびにその配偶者および直系血族、⑤行方不明者となることがあげら れます(後見の場合:民法第847条。保佐の場合:民法第876条の2第2項、補助の場 合:民法第876条の7第2項で準用)。成年後見人等に選任後に欠格事由に該当するこ ととなったときには、その地位を失うことになります。この場合も、速やかに後任の 成年後見人等が選任されます。

法定後見の終了の手続

法定後見の任務の終了に際しての事務は、管理の計算、後見等の終了の登記の申請、 財産の引渡し、家庭裁判所への報告などの職務を行わなければなりません。
管理の計算は2か月以内にしなければなりません(後見の場合: 民法第870条。保佐の場合:民法第876条の5第3項、補助の場合:民法第876条の10第2項で準用)。
成年後見監督人等があるときには、その立会いをもって行います(後見の場合:民法第871条。保佐の場合:民法第876条の5第3項、補助の場合:民法第876条の10第2項で準用)。具体的には、成年後見人等が管理していた成年被後見人等の財産についての収支状況報告書と財産目録を作成し、報告します。報告の相手は、絶対的終了では相続人、 後見開始の審判が取り消された場合は成年被後見人等であった人、相対的終了では後任の成年後見人等になります。
また、成年後見人等であった者は、急迫の事情があるときには、後見事務の引継ぎ が終わるまでは、必要な処分をしなければなりません(民法第874条による第654条の 準用)。
成年後見人等と成年被後見人等との間で、後見等の任務を行うことで生じた債権は、成年後見人等の管理権が消滅したときから5年の時効によって消滅します。(民法第875条、第832条)。
成年後見等の終了の登記については、家庭裁判所の審判により終了する場合には、 裁判所書記官が登記の嘱託の手続きをします。一方、成年被後見人等の死亡により法 定後見が終了した場合には、成年被後見人等の死亡を知った成年後見人等が、後見等の終了の登記を申請することになります(後見登記法第8条第1項)。

まとめ

今回は法定後見制度の終了についての記事を書きました。成年被後見人、後見人の死亡事由や辞任は仕方がないかもしれませんが、解任にだけはならないように気をつけなければなりませんね。

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