【相続人と連絡が取れない場合の対処法】~行政書士試験合格者が解説~

相続

今回の記事も相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
前回は相続人がいない場合(単身者・相続放棄で相続人がいない)に家庭裁判所に選任してもらう相続財産管理人についてご紹介しました。今回は相続人がいても連絡が取れない場合の対処法についてご紹介出来たらと思います。
この記事を読むことで相続人はいるが連絡がつかずに困っている場合の対処法について知ることができます。

何処にいるのか分からない場合

相続人が確定しても、相続人と遺産分割について話し合いをしなければ、相続が完了しません。連絡が取れない相続人を省いた遺産分割協議は無効になっていますので、相続人には連絡を取り相続放棄するのか、相続するのかを決定しなければなりません。

戸籍・住民票で住所を確認する。

相続人の住所地を調査します。通常、住民票のある場所に住んでいるので現在住民票が置かれている場所を確認できれば、連絡を取れる可能性があります。住所地は、「戸籍附票」をみます。
相続人の住所が分かれば、手紙で連絡を入れてみましょう。相手からの返答があれば、そのまま相続手続きを進められます。

不在者財産管理人の選任

住民票上の住所地を特定しても、その場所に居住していないケースもあります。
相続人が「行方不明者」となって連絡が取れないのであれば家庭裁判所で不在者財産管理人の選任を検討しましょう。
不在者財産管理人とは、財産管理人を置かずに行方不明になっている場合において、本人の代わりに財産管理をする人を選任する手続きのことを言います。 共同相続人であれば、利害関係人として不在者財産管理人の選任申し立てをすることが可能です。
不在者財産管理人になれるのは、相続に利害関係を持たない被相続人の親族や、弁護士・司法書士などの専門家です共同相続人が自ら不在者財産管理人になることはできません。
親族の中に適切な候補者がいない場合、家庭裁判所が専門家の中から適当な人を選任します。不在者財産管理人の選任申し立ては、不在者の最終の住所地のある家庭裁判所で行います。

失踪宣告を行う

連絡が取れない相続人が生死不明の状況が7年以上経過している場合は「失踪宣告」を行うことが出来ます。失踪宣告とは、長期にわたって行方不明になっている人について「死亡した」と同様の扱いにする手続きのことを言います。
普通失踪の場合、7年間生死不明であれば申し立てができます。危難失踪の場合には危機が去ってから1年で失踪宣告の申し立てが可能です。
失踪宣告が行われると、その相続人は「死亡した」扱いとなるので、遺産分割協議に参加なくて済むことになります。しかし、失踪宣告を受けた者に相続人がいれば、その相続人を参加させることになります。(代襲相続)

連絡がとれても無視される場合

実際に連絡が一度取れても、以降連絡が取れなくなる場合があります。何度連絡をしても返事がない場合、相続手続きが進まずに相続税の期間が経過すると不利益を被ることになりかねません。連絡を無視する相続人に対しての対応方法を紹介します。

どのような不利益が生じるかを伝える

まずは相続人に「放っておくとどのような問題があるのか」を伝えましょう。
たとえば「早期に相続手続しないと相続税の計算ができない」、「このままでは家庭裁判所で遺産分割調停をせざるを得なくなるけれど、そのようなことはお互いにとって面倒なことになる」などと手紙やメールなどで知らせましょう。

家庭裁判所で調停を申し立てる

連絡を無視され続けた場合の相続手続きの流れ相手が強硬な場合や、すでに深い対立関係の場合、家庭裁判所で遺産分割調停を申し立てて話し合いを進めるしかありません。
調停を申し立てると、家庭裁判所から相手の住所地に呼び出し状が送られます。そのため、自分で相手に連絡を取る必要はありません。調停でも話し合いが成立しない場合には遺産分割審判となって、裁判所が遺産分割の方法を決定します。

相続財産を放置すると

遺産分割をせずに放置してしまうとさまざまなリスクがあります。相続放棄や相続税など期間が決まっているものもありますので早めの対策が肝心です。

不動産を活用できない

相続財産の中に不動産がある場合、遺産分割協議をしないと不動産を活用することができません。相続の不動産は法定相続人の「共有」状態となるからです。共有状態で不動産を賃貸、増改築、解体、建て替え、売却などを行うには、すべての共有者の合意が必要となります。

預貯金の払い戻しができない

相続財産の中に預貯金が含まれている場合には、遺産分割協議書を作成しないと全額の払い戻しができません。法定相続人であれば法定相続分の範囲において一部の払い戻しが認められますが、全部は引き出せないので中途半端な状態で預貯金が放置されてしまいます。

相続税の計算に問題

相続税申告における不利益相続財産が多額な場合、相続税の申告と納税が必要ですが遺産分割協議を行わないと税金申告の場面でも不利益を受けます。遺産分割協議が成立していないと、相続税の配偶者控除や小規模宅地の特例などの適用を受けられないといった問題が生じます。

まとめ

相続人の調査や財産調査は一人でも可能ですが、相続財産の分割協議は相続人が全員で話し合いをしなければいけないため、連絡が取れない場合や、連絡がついてもその後の連絡が取れなくなった場合には、相続の分割が出来ずに時間だけが経過してしまうといった問題が生じます。期間が決まっている手続きもあるため早期に対策を取り解決しておくことをお勧めします。

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