【共有物の分割について】~行政書士試験合格者が解説~

民法

今回から行政書士試験の民法の知識に加え、実務で使えることを記事にしていこうと思います。当初よりこのブログはインプットした知識をアウトプットする場と考えていました。
今回行政書士試験に合格したため、行政書士としての実務を勉強し、その知識を記事に残していければと考えています。
今回の記事は、相続にまつわる民法の知識について今までの記事で詳しく紹介していなかった内容について記事を書きたいと思います。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今後とも宜しくお願いいたします。
ではさっそくですが、今回は相続時に関わりのある民法の物権、所有権の共有について説明していこうと思います。

所有権の共有とは

1つの物を2人以上の者が共同で所有することを共有といいます。共有状態が最も多く生じるのは、被相続人の遺産が共同相続された場合です共有者には各自の持分が認めれます。持分には共有者の各人の有する所有権の割合です。3人の共有者がいた場合、何も特約がなければ3分の1ずつになりますが、負担金額が違えば持分は価格に応じて変わります。

各共有者は共有物の全部について、その持ち分に応じた使用をすることが出来ます。また、各共有者は自分の持ち分を他の共有者の同意なく処分(譲渡、担保権)することが出来ます。

共有者の1人がその持ち分を放棄し、または相続人なくして死亡した時(特別縁故者もなし)は、その持ち分は他の共有者に帰属します。この際に第三者に対抗する場合は移転登記をしておく必要があります。

共有物の変更・管理・保存

共有物はその持ち分に応じて使用できますが、一定の基準があります。

①各共有者は他の共有者の同意がなければ共有物に変更を加えることが出来ない。例えば建物の増築や共有物の売却をいいます。

②管理に関する事項や軽微な変更の場合は持分価格の過半数の同意で決めることになります。ここで持分とありますので、例えばさんが3分の1持分を有し独占していた場合、BさんとCさんが共同して、Aの独占占有を排除し渡すように請求することができるということです。また、短期間の賃借権も持分価格の過半数の同意が必要となります。

③共有物の保存は、他の共有者の同意なく各共有者が単独で行うことができます。例えば不法占拠者に対する明け渡しなどです。しかし、不法行為に基づく損害賠償請求権は持分だけしか行使できないため注意が必要です。

共有物の分割と解消

共有者はいつでも共有物の分割を請求することができます。この場合、どのような方法をとるのも自由ですが、現物分割および共有者に債務を負担させて、他の共有者の持ち分の全部または一部を取得することが出来ます。

各共有者はその持ち分に応じて共有物の管理費用を支払わなければなりませんが、共有者が1年以内にこの義務を履行しない時は、他の共有者は相当の償金を支払ってその者の持ち分を取得することが出来ます。

共有物分割禁止の特約

共有状態を維持するために共有物分割を禁止する合意が認められています。共有者全員が賛成する必要があります。つまり、共有者のうち1人でも反対したら、分割禁止の合意(特約)は成立しません。
また、分割することを保護するため、分割禁止は最小限にとどめて必要があり、最長期間は5年となっています。
期間が満了した時に、更新することもできます。更新の場合も、初回の分割禁止特約と同じように、共有者全員が賛成することが必要です。

遺産分割

遺産相続により相続人の共有となった財産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家事事件手続として「家庭裁判所が審判によつてこれを定めるべきものであり、通常裁判所が判決手続で判定すべきものではない」としていました。しかし、相続開始の時から10年を経過したときは、遺産の共有持分について共有持分分割訴訟により裁判所に訴訟提起できるようになります。一方と相続時の特別受益や寄与分の主張が10年に制限されることになります。これは相続による手続きが長期化する傾向にあるため、早期解決を促す手段として法律化されています。

所在不明共有者の持分取得制度・持分譲渡権限付与制度

不動産が複数の共有者に属する場合において、共有者が他の共有者を知ることが出来ず、またその所在を知ることができないと言った時には、裁判所は、共有者の請求により、当該他の共有者(所在不明者)の持分を取得させる裁判を行うことが出来ます。また、共有者に所在不明者等共有者の持分を特定の者に譲渡する権限を付与する旨の審判をすることができます。これは、所有者不明土地の発生・増加を抑えるために裁判所の決定により円満に共有関係を解消できる制度です。

まとめ

今回は遺産分割とその後にも関わりのある共有物についての説明をしました。被相続人に共有で所有する不動産があったり、相続人も分からずにそのままになっている不動産が増えている現状があり、近年民法が改正されています。特に家庭裁判所での話し合いで決着がつかなかった問題に対して裁判所が決定する方向に動いています。ご自身の相続で困ったことがあれば一度専門家に相談することをお勧めします。

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