【後見事務・財産調査の方法】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
前回の記事で成年後見人に選任された後、どんなことをするのか?について解説しました。その中で、財産目録について記載しました。成年後見人が最初に行う業務として、家庭裁判所へ財産目録と収支予定表の提出を1ヶ月以内にしなければなりません。今回は財産目録を作成する際に必要となる、財産調査の方法についての記事となります。
今回の記事を読むことで成年後見人の業務について知ることが出来ます。

成年後見人の財産管理

「成年被後見人(せいねんひこうけんにん)」とは、「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況」にあり、成年後見制度を利用して保護または支援を受ける人(本人)を指します。そのため成年後見人は、本人に代わって、本人の財産を適切に管理します。契約を締結したり、預貯金の管理等をしたりすることによって、成年被後見人の財産上の利益を保護することが業務となります。
成年被後見人(本人)が全ての財産を把握し、後見人に伝えることが出来ればいいのですが、上記の状態の中では難しい場合もあります。そんな時に、財産をどのように調査するのかを確認していきましょう。

法定後見人の財産調査する理由

成年後見人に就任すると,本人の財産を調査し,家庭裁判所に報告する必要があります。
民法には,

(財産の調査及び目録の作成)
第八百五十三条 後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、一箇月以内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。

と定められており,成年後見人に就任してもっとも忙しい時期の一つがこの就任後1か月の期間だといわれています。

調査方法

どのような財産を持っているのか本人に確認することができれば一番いいのですが,精神状態の悪化や認知症により本人が把握できておらず,家族やヘルパーさんなども分からないときは,成年後見人が自分で調べなければなりません。
調査の方法については,それぞれの後見人独自の方法によって調査しますが,次のような方法をとっているようです。

1.市町村役場で取得できる証明書を活用する

財産調査をする上で,市町村役場で取得できる証明書としては,次のような証明書があります。
1.所得証明書・課税証明書
2.固定資産(土地・建物)の評価証明書・公課証明書
3.軽自動車税の納税証明書

まず、所得証明書・課税明細書です。所得証明書を取得することで,だいたいの収入額がわかります。
この証明書を取得する一番の理由は,預貯金通帳とつきあわせることで,別口座の存在が確認できるかもしれない,ということです。また,課税明細書を確認することで,昨年度などの税務申告の状況が推認できます。
次に固定資産の評価証明書です。この証明書を請求した市町村に不動産がある場合は,固定資産税評価証明書に不動産の所在や評価額が示されているため、不動産財産の有無について知ることが出来ます。その他、軽自動車税の納税証明書については,自宅裏に止めてあるバイクを確認したり,「以前乗っていた」といったことを聞いた場合に取得しています。早く手続をすることによって,次年度以降,無駄に税金を支払わなくて済むようになります。

2.預貯金通帳を確認する

財産調査をする上で,預貯金通帳から次のことを確認しています。
1.所得・収入額
2.月々の支出額
3.自動引き落とし・自動振替されている項目
4.その他の振込・振替

毎月・毎年の収入額,支出額の確認によって所有する財産を推認することができます。貯金通帳の中で重要なのが自動引き落とし・自動振替されてる項目です。この項目から,定期預金の積立,生命保険料の振込,ローンの存在などがわかります。また、過去に遡れば,証券会社との取引や葬儀会社への積立などがわかることがあります。

3.郵便物を確認する

最期に郵便物を確認しましょう。定期預金の自動更新や年次の利息報告,証券会社からの資産運用報告などプラスの物もあれば、借金があれば督促状、家賃の滞納の支払い通知などマイナスの物も郵便で届くため,しっかりとチェックすることが重要です。年に一度程度の郵便による通知から,思わぬところの財産が発覚することもあります。

財産目録の作成について

成年後見人には財産目録を作成して,家庭裁判所に提出する義務があります。これは,本人の財産を特定し,適切に管理するためです。
就任後すぐに財産目録を作成して,本人の財産を家庭裁判所に報告し,一定期間経過(概ね一年)ごとに適切に管理運営ができていることを家庭裁判所に報告するために,財産目録を作成して報告します。この財産目録は,家庭裁判所が成年後見人の仕事ぶりを確認する基礎資料になります。
財産目録をいい加減に作成すると,成年後見人の仕事に支障を来したり,家庭裁判所から管理不十分だと判断され,解任されたりすることにも繋がりかねません。また,財産の特定が不十分であれば,後日思わぬ形で,本人の財産を損ってしまい,横領だといわれる可能性も出てくるため注意が必要です。

まとめ

今回は成年後見人の最初に行う事務の中で重要な財産調査についての具体的な方法についての記事を書きました。本人が把握していない財産が出てくるかもしれないため、調査は欠かさない方がいいかもしれませんね。

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