【日常生活自立支援事業と成年後見人】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は成年後見人制度に似た制度である日常生活自立支援事業について説明します。
今回の記事を読むことで成年後見業務と日常生活自立支援事業の違いを知ってもらえればと思います。

日常生活自立支援事業とは

日常生活自立支援事業とは、認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等のうち判断能力が不十分な人が地域において自立した生活が送れるよう、利用者との契約に基づき、福祉サービスの利用援助等を行うものです。

日常生活自立支援事業を利用できる人

日常生活自立支援事業を利用できる人は、次の両方に該当する人です。

・判断能力が不十分な人(認知症高齢者、知的障害者、精神障害者等であって、日常生活を営むのに必要なサービスを利用するための情報の入手、理解、判断、意思表示を本人のみでは適切に行うことが困難な人)
・日常生活自立支援事業の契約の内容について判断し得る能力を有していると認められる人

サービス内容

福祉サービス利用援助

  • 福祉サービスの利用または利用停止に必要な手続
  • 郵便物等の確認や必要な手続の代行や同行
  • 悪質訪問販売等の消費トラブルなどへの対応
  • 日常生活の相談支援

金銭管理サービス

  • 福祉サービスの利用料の支払手続
  • 医療費・税金・公共料金・家賃・日用品等の支払手続
  • 年金や各種手当等の受給手続
  • 上記の支払に伴う預金の払戻・預入等の手続

書類等預かりサービス

  • 年金証書、預貯金通帳、証書
  • 実印、銀行印
  • その他、本会が適当と認めた書類

利用料

・相談無料
・契約後、支援内容により利用料が必要

認知症高齢者、知的障害者、精神障害者などの、判断の能力が不十分な方に対する援助方法「日常生活自立支援事業」「成年後見制度」の二つがあります。

日常生活自立支援事業を利用開始するまでの流れ

1.相談申し込みまず、利用希望者は、最寄の社会福祉協議会などに申請(相談)します。
2.相談・判断能力判定そこで、利用希望者の生活状況や希望する援助内容を確認するとともに、「契約締結判定ガイドライン」あるいは契約締結審査会で、本事業の契約の内容に関する判断能力の判定が行われます。
3.支援計画の作成要件に該当すると判断された場合、援助内容や実施頻度等の具体的な支援を決める「支援計画」が策定されます。
4.契約締結・サービス開始契約が締結されると、計画に基づいて生活支援員によるサービスが開始されます。

サポートの範囲が違う

日常生活自立支援事業は、利用者が地域で自立した生活を継続するために必要な行為に限定されています。具体的には、福祉サービスに関する契約、預貯金の出し入れ・解約、医療費や社会保険料などの支払い、年金・福祉手当の受け取り、行政手続きのサポート、定期的な訪問による生活の変化をキャッチ、預貯金通帳・実印などの保管があります。
いっぽう、成年後見制度では、日常生活自立支援事業で行う業務のほかに、介護施設への入所、病院への入院、自宅の増改築などに関する契約、相続人になったときの遺産分割協議への参加、相続放棄などもできます。また、本人介護施設に入居するときは、家庭裁判所の許可を得ながら、自宅の売却、賃貸借の解約することができます。
なお、手術の同意、延命措置に関する判断などは、日常生活自立支援事業でも成年後見制度でもできません。

日常生活自立支援事業と成年後見人制度、どちらを選べばいい?

日常生活自立支援事業は、成年後見制度(任意後見)の利用を検討するほど、財産はないけれども、足腰が多少衰えたり要介護状態になったりして、銀行に行くなど、日常的な財産管理が難しくなった方などが気軽に利用できるサービスと言えます。しかし、徐々に判断能力が低していけば、成年後見制度を併用あるいは本事業を解約して移行するなどして、必要に応じて、切れ目なく支援を受けられるようにしたいものです。

どちらを選ぶこともでき、併用も可能

日常生活自立支援事業のサービス内容の多くは後見業務の範囲に含まれるため、成年後見人が選任されたら、基本的には日常生活自立支援事業は解約を検討することになります。しかし、本人の判断力によって、両制度の対象者を分けられるわけではありません。日常生活自立支援事業を利用できるのは、契約の内容を理解できる能力と利用意思がある人です。
成年後見制度では、判断力の衰え方が大きい順に、上から①後見②保佐③補助の3つの類型がありますが、「支援を受ければ契約の内容を理解できる人」は保佐・補助に類当たります。
したがって、本人で契約できる程度の判断力があれば、日常生活自立支援事業と、成年後見制度の保佐・補助類型のどちらでも利用できます。日常生活自立支援事業を選んで利用していた人の判断能力が著しく低下した場合は、成年後見制度の後見類型に移行するため、家庭裁判所に申立てを行います。ただし、日常生活自立支援事業が「本人の利益のため必要不可欠な場合」に限られます。その場合、成年後見人と間で契約を交わすことが可能です。

まとめ

今回は成年後見制度と日常生活支援事業制度の違いについてご紹介しました。日常生活自立支援は契約であるため、ある程度本人の意思疎通が必要になります。しかし、成年後見制度は家庭裁判所が必要と判断した時に成年後見制度の利用可能となります。日常生活自立支援から成年後見制度へ移行することもありますので、制度の違いを確認しておきましょう。

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