【成年後見人の利益相反行為とは】~行政書試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は成年後見人の利益相反行為について解説します。
今回の記事を読むことで成年後見人として権利侵害にならないようを注意ていただければと思います。

利益相反行為とは

利益相反とは、ある個人や組織が自分の利益を追求することで、他の人や組織の利益に対立する状況を指します。利益相反が発生すると、関係者の間に不信感が生じ、最悪の場合は法的な問題に発展することもあります。利益相反は一見分かりにくいことが多いですが、その本質は「自分の利益を優先することで他者の利益を損なう可能性がある」状況です。このような状況は、公平性や信頼性を損ないます。ではどういった状況で成年後見人が利益相反行為となるのか説明していきます。

自己契約・双方代理となる場合

民法第108条では、「同一の法律行為について、相手方の代理人として、又は当事者 双方の代理人としてした行為は、代理権を有しない者がした行為とみなす。ただし、 債務の履行及び本人があらかじめ許諾した行為については、この限りでない」として、 自己契約,双方代理を禁止しています。さらに第2項として、上記のほか、「代理人と本人との利益が相反する行為については、代理権を有しない者がした行為とみなす。 ただし、本人があらかじめ許諾した行為については、この限りではない」とされます。 例えば、成年被後見人が所有している土地を成年後見人自身が購入する場合には、 これに該当することになりますので注意が必要です。

特別代理人等の選任

成年後見人と成年被後見人との間の利益が相反する行為については、民法第860条において、民法第826条の親権者と子との利益が相反する行為と特別代理人の選任の規定を後見人に準用するとし、後見監督人がある場合は、この限りでないと定めてい ます。したがって、成年後見人と成年被後見人との間で利益相反が生じ、成年後見監督人がいない場合は、特別代理人の選任が必要になります。なお、保佐の場合で保佐監督人がいない場合は臨時保佐人(民法第876条の2第3項)、補助の場合で補助監督人がいない場合は臨時補助人(民法第876条の7第3項)の選任が必要となります。

サービス提供者とサービス利用者の場合

施設職員・介護支援専門員などのサービス提供者が、当該サービス利用者の成年後見人等になる場合は、利益相反関係になると考えられます。
法人に所属する職員は、その法人と雇用契約を結び、 当然に法人側の利益のために法律行の成年後見人等に選任されるか否かについては、 その法人および当該施設の命令に従って職務を遂行しているわけですから、施設側の立場にいるとみられます。

親族・家族間で留意を要する場合

親子など同居の近親者、あるいは推定相続人である親族が成年後見人等になった場合でも、成年被後見人等と成年後見人等との間で利害が対立する場合があります。例えば、成年被後見人である親に代わって施設と入所契約を行えば、親の成年後見人となった子が、 契約をして、その後、 成年被後見人所有の土地・建物を売却して代金を費消する、財産を減らさないために必要な介護サービスを利用しない、また相続にあたって成年後見人等が成年被後見人等の相続分を不利にするような遺産分割協議書を作成するなど、日常的な契約行為や身上保護において親族・家族間での権利侵害のケースが予想されます。 また、本人の意向ではなく成年後見人等である親族の意向が優先されるという懸念が生じる場合もあます。

利益相反になった場合はどうするか

後見監督人を選任する

後見監督人(保佐監督人・補助監督人)がいる場合は、監督人は、「後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表する」とされています。

追加で後見人を選任する

複数後見の場合、権限分掌となっていれば、特定の行為に関する権限を有する後見人との間で利益相反関係にならなければ問題はありません。最初から複数後見人が選任されており、かつ権限分掌されていれば、特に手続きを取る必要もなく利益相反の問題は解決します。
もっとも、複数後見でも、財産管理を担当する後見人との間で利益相反になった場合や、権限を共同行使することになっている場合は、問題は解消されません。

まとめ

成年後見人は本来は被成年後見人の財産を守ることが仕事です。しかし、成年後見人の置かれている立場によっては利益相反行為になってしまう場合があります。成年後見人に選任される前に利益相反行為が起きない方を選任するか、選任されたとしても利益相反行為になることを自覚したうえで業務にあたることが必要と考えます。今回の記事を参考に、被成年後見人の不利益にならないような金銭管理を心掛けていきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました