【成年被後見人の身元保証問題】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は親族でない第三者が成年後見をしていると医療同意問題と伴に身元保証人問題に出くわす可能性があります。成年後見人が安易に身元保証人になると後で大変な目にあう可能性があります。
今回の記事を読むことで成年後見業務の判断基準の助けになればと思います。

身元保証人とは

身元保証人・身元引受人については、その役割が契約上さまざまに規定され、さまざまに解釈されています。

第一条 引受、保証其ノ他名称ノ如何ヲ問ハズ期間ヲ定メズシテ被用者ノ行為ニ因リ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証契約ハ其ノ成立ノ日ヨリ三年間其ノ効力ヲ有ス但シ商工業見習者ノ身元保証契約ニ付テハ之ヲ五年トス

「身元保証に関する法律」における身元保証人は、雇用契約上の身元保証人を意味し、被保証人による事業者などへの損害賠償の責任を負うとさ れています。身元保証人の条件として、民法第450条では、「能力者たること」と「弁済の資力を有すること」があげられています。つまり、身元保証人には私財を提供してでも賠償請求に応じなければならないことが起こり得ると理解されます。

身元保証人

身元保証人とは、本人の債務も負うため、被後見人の財産がなくなった場合自分の財産から入院費や生活費を負担しなければなりません。

身元引受人

身元引受人とは、本人が有事の際に対応、相談を行う。つまり緊急連絡先として登録され、本人に不測の事態などが生じた際には、本人に代わり施設との連絡窓口となります。

身元保証人・身元引受人の責務

福祉施設への入所や福祉サービスの利用、入院時などに求められる「身元保証人」 「身元引受人」について、いかなる責務を要求されているのか明確でない場合があります。単に、成年被後見人等の死亡時の遺品の引取りや親族への連絡を求められているにすぎないこともあります。 また、福祉サービスの利用料の支払いが滞っ たときに、支払いの肩代わりを要求される場合もあります。
成年被後見人等の重大な過失によって施設やほかの施設利用者に与えた損害の賠償責任を問うものであるかもしれません。
何らかの理由で施設退所や退院を求められたときに、身柄の引受けなどの身元引受を求められる場合もあります。身元保証契約書あるいは身元引受契約書の内容によって、どのような責任を負うかを確認することが必要です。
これらの契約書または契約条項がないまま身元保証人・身元引受人と表示して署名捺印することは避けるべきです。施設または病院などから成年被後見人等の身元保証人・身元引 受人になることを求められた場合にはまず、その責任内容を確認する必要があります。「形式だけですから・・・」などという言葉を信じて安易に署名すると、後日、大変 な負担を負うことも考えられますので、十分に注意してください。

成年後見人等が身元保証人・身元引受人となるべきではない理由

成年後見人等は、成年被後見人等の身元保証人や身元引 受人にはなるべきではないと考えます。なぜなら、以下の理由が考えられるからです。

① 責任範囲が明確でない責任は負うべきではないこと(単に口頭の説明では、後日違う解釈が出てくることもあります)
② 将来の損害賠償などの責任を回避するために、 その原因となる可能性のある施 設やサービスの利用を成年被後見人等に制限する可能性があること
③ 仮に成年後見人等が身元保証人または身元引受人としての責任上賠償義務に応じた場合、最終的には成年被後見人等に対する求償権(身元保証人などの責任として、成年被後見人等の債務を支払った成年後見人等が、これを成年被後見人等に請求できる権利)を有することになり、これは明らかに利益相反の関係であること
④ 施設退所や退院の場合、身元保証人・身元引受人である成年後見人等が成年被後見人等を自宅に引き取らざるを得ない状況が生じる可能性が否定できないこと (このようなことは、第三者である成年後見人等としての責務を超えるものであると考えられること)

現実には、入院しなければならない成年被後見人等を目の前にして病院から身元保証人になることを要請されたり、成年後見人等が成年被後見人等の身元保証人・身元 引受人になりさえすれば施設入所が可能である状況に直面して、苦しみ悩む場面は多々あると思われます。しかし、緊急連絡先、利用料の支払い、成年被後見人等の今後についての検討など、成年後見人等がいることで解消できることがあります。成年後見制度の趣旨と成年後見人等としてできること、できないことを施設 に十分に説明して、できることの範囲で協力することを条件に入所を認めてもらうよ う、粘り強く交渉することが必要です。

ただし、司法書士や弁護士の方など第三者が後見人になっている場合は、身元引受人(身元保証人)にならない方がいいですが、親族が後見人となっている場合は“親族”の立場として後見人と身元引受人の責務を同一の人が行う場合があります。

まとめ

今回は親族以外の第三者の成年後見人が契約時に身元保証を要求された際に気を付けるべきポイントについて説明しました。身元保証によるトラブルはよく聞くことなので、そういった問題が起きないように成年後見業務を進めれたらと思います。

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