【成年後見の申立人になって欲しいと言われたら】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事から成年後見制度についての知識について本格的に書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回は成年後見人の制度を理解するための大枠の部分についての記事を書いていきます。
皆さんは成年後見人になって欲しいと頼まれたらどうしますか??たとえ自らが成年後見人になることは無理だとしても、誰かしら成年後見人を付けるための申立てにはぜひ協力してあげて欲しいと思いますが、実際には成年後見申立ての手続きや費用負担についてよく知らずに引き受けてしまうと「こんなはずじゃなかった!」と後悔するおそれがありますので、この記事を参考にして頂ければと思います。

成年後見制度の申立て

まずは成年後見開始の申立てを家庭裁判所に行う必要があります。しかし、申立権者は法律で決まっており、誰でもできるわけではありません

・本人、配偶者、4親等内の親族
・未成年後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者
・未成年後見監督人、保佐監督人、補助監督人、任意後見監督人
・検察官(実際に申立てを行う例はほとんどありません)
・市区町村長

上記の方が申立人となります。本人も申立てができますが、判断能力の低下の度合いによっては不可能です。市区町村長も申立てができますが、まずは親族の意向を調査することが原則となっています。そのため、疎遠な親族に連絡が来ることがあります。

親族が誰もいなかったら?

親族がいない場合は市町村長が申立人となることがあります。親族の調査(存在する場合はその意向の調査)を行うことが原則ではありますが、親族に申立ての義務はないので、意向がないことが確認できれば市区町村長による申立てを行うことができます。また急を要する事案であれば親族調査をすることなく市区町村長が申立てを行うこともあります。
なお、市区町村長による申立てには他の申立権者にはない条件があり、以下の者について本人の福祉を図るために特に必要がある場合申立てができます。

・65歳以上の者(65歳未満の場合は、特に必要があると認められる者)
・精神障害者
・知的障害者

成年後見制度申立てに必要な物

次に成年後見制度を申立てる際に必要な物を紹介します。

・申立書・申立事情説明書
・本人の住民票・戸籍謄本・登記されていないことの証明書
・診断書
・本人情報シート
・財産目録・収支予定表
・親族関係図・親族の同意書

裁判所によっては上記の他にも独自に提出書類を定めている所もあります。財産目録・収支予定や親族関係については完璧でなくともわかる範囲で結構です。

成年後見申立ての費用

成年後見申立てには一定の費用が必要となります。申立てに要する費用は以下の通りです。

1.家庭裁判所に納める収入印紙、郵券(切手)
2鑑定費用(鑑定が必要と家庭裁判所が判断した場合のみ)
3.必要書類の取得費用(本人の住民票・戸籍謄本・登記されていないことの証明書など)
4.専門家報酬(司法書士・弁護士に手続きを依頼した場合)

特に2・4がやや高額(数万円~十数万円)なので注意が必要です。1・2の費用は、申立ての際に本人負担とすることを希望すれば認められることがあります。また、3・4の費用についても事情によっては極めて例外的に本人負担が認められることもあるようです。
ただし、あくまで原則は申立人負担であり、本人負担とする手続きを踏まずに本人の預金口座からお金を引き出して申立て費用に充てたりすると、後で選任された成年後見人から返還を求められることになります

成年後見制度の申立て後にすること

書類提出後に、予備審問のために家庭裁判所へ行ったり、調査官が本人と面談する際に立ち会ったりする必要があります
病気や高齢等の事情があれば免除されることもあります(その旨の上申書の提出を求められることがあります)が、書類を提出したら終わりという訳ではないことにご注意ください。

家庭裁判所は、本人の心身状態並びに、生活や財産の状況、成年後見人候補者の職業や経歴、さらに成年被後見人との利害関係の有無、成年被後見人の意見その他一切の事情を考慮して、後見人の選任を行います。したがって、申立時に後見人の候補者を立てたとしても、必ずしも候補者が選任されるとは限りません。
さらに、家庭裁判所が必要と認めた場合には、後見人を監督する「後見監督人」が選任される場合もあります。

成年後見の申し立て後、早ければ2週間程度で、家庭裁判所は後見人選任の審判をします。家庭裁判所は本人と後見人に対して、後見人に選任された旨の審判書を送付します。本人と後見人が審判書を受け取ってから2週間後に審判が確定します。

まとめ

今回は成年後見人になって欲しいと言われた際にどんな手続きを行い、どれだけの費用がかかるのかについて解説しました。この手続きを理解した上で申請をお手伝いするのか検討しましょう。

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