【相続時の不動産財産の評価額について】~行政書士試験合格者が解説~

相続

今回の記事も相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回は相続時に大きな資産となる不動産の価格の見積もり方についてご紹介したいと思います。実は不動産には価値を評価するいくつかの方法があります。その方法によって、評価の目的が違います。そのため、相続人の中で不動産の価格の考え方に違いがあり、揉める元になりかねません。今回はそんな不動産の評価方法について説明してきます。
この記事を読むことで不動産の評価額の種類について知ることができます。

不動産の評価額

土地や建物などの不動産は一物五価と言われ、見る人や価値を算出する目的によって調べる評価額が変わってきます。一物五価とは、1つのもの(建物)に対し、5つの価格(土地評価方法)があるといった意味です。
例えば、「相続税を計算したい場合は相続税路線価」、「売却価格を調べたい場合は実勢価格か固定資産税評価額」などです。目的によって正しい評価額を調べることが大切です。では5つの評価方法についてご紹介します。

固定資産税の評価額

固定資産税評価額とは、「各市区町村の不動産鑑定士が家の劣化状況を実際に確認して評価した価格」です。三年に一度見直され、固定資産税以外にも、都市計画税や登録免許税、不動産取得税などの算出に使用されます。
なお、固定資産税の計算方法は(固定資産税評価額×1.4)です。固定資産税は毎年1月1日時点で所有している不動産に対し課税されます。

公示地価

公示地価とは、国が公表している都市計画区域内の土地価格のこと(1平方メートルあたり)で、毎年3月に公表されています。また、公示地価は全国26,000地点を調査しており、「住宅地」「工業地」「商業地」などに分類し発表されています。公示地価はその年の1月1日時点で、全国の標準地の土地価格を公表し、以下の役割があります。

  • 相続税・固定資産税の評価目安
  • 土地取引の目安
  • 担保評価(金融機関による)
  • 土地の評価の基準や指標(不動産鑑定の基準)

公示地価は、不動産に関する評価や目安などに利用されており、非常に重要な価格です。税や土地取引に関する目安となるため、2人以上の不動産鑑定士がそれぞれに鑑定を行い決定しています。

基準地価

基準地価は、国土利用計画法に基づいて都道府県が行っている、全国の基準地の土地価格を公示する指標です。毎年7月に評価が行われ、9月頃に発表されています。土地の取引から、地方公共団体や民間企業が行う土地取引の目安として基準地標準価格を活用されます。
公示地価と評価方法や内容が似ていますが、調査を所管するのが「国土交通省」なのか「都道府県」なのかといった点が違います。また、公示地価と基準地標準価格では、調査の際に必要とされる不動産鑑定士の人数が違い、公示価格が不動産鑑定士2名以上に対し、基準地標準価格は1名以上です。
基準地価がある理由としては公示地価が年1回の公表となっているため、変動する地価に対し正確ではない可能性が出てくるからです。
また、基準地標準価格は都市計画区域外も対象としているため、林地なども対象となっています。基準地標準価格は、公示地価を補完する役目があります。

路線価

路線価は、宅地の価格がほぼ同じであり、道路に面する宅地1平米あたりの価格を1,000円単位で表した価格のことです。路線価は国税庁が所管しており、毎年1月1日を評価時点とし、7~8月頃に公表されています。主に不動産を相続したり、贈与されたりした場合の「相続税」や「贈与税」を評価する際に用いられ、税の計算をよりスムーズに行うために公示地価の80%となるようにあらかじめ決められています。

実勢価格

実勢価格とは、「公的機関が公表する価格ではなく、市場で実際に売買取引が行われた価格」です。不動産取引において実際に売買が成立した価格なので、公的機関が公表する評価額と異なるケースがあるので、注意しましょう。

不動産の評価額について相続人の間での合意できれば問題ないのですが、合意できない場合には、家庭裁判所での調停を経て、最終的には審判で決定されます。この際、裁判所は遺産に含まれる不動産を遺産分割時の実勢価格で判断します。
実勢価格をいくらと考えるのかについては、遺産分割の話し合いの場面であれ、調停や審判の場面であれ、実際には根拠資料に基づいて議論することになります。

実勢価格の目安

実勢価格は「取引が成立した価格」なので、実際に売ってみないと分かりません。
しかし、色々な方法で実勢価格の目安を調べることは可能です。ここでは、実勢価格の目安を調べて計算する方法をいくつか紹介します。

公示価格・基準地価を調べて算出する

公示価格の「土地の正常な取引の指標の価格」や同じ目的で都道府県が公表している価格を「基準地価」を目安にします。
実勢価格は、一般的に公示地価の1.1~1.2倍程度が目安となります。ただし、人気のエリアの場合は1.5倍以上になることもよくありますし、不動産の特徴や状態によって価格が大きく変動することもあります。あくまで目安として知っておきましょう。

路線価を調べて算出する

路線価は基本的に公示価格の80%程度に設定されているため、公示価格の水準に直すことで、実勢価格の目安を算出できます。

実勢価格の目安=路線価÷0.8×1.1~1.2

固定資産税評価額を調べて算出する

固定資産税評価額は基本的に公示価格の70%程度の水準で設定されているため、公示価格の水準に直すことで、実勢価格の目安を算出できます。

実勢価格の目安=固定資産税評価額÷0.7×1.1~1.2

固定資産税評価額は、毎年4~6月ごろに市区町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に記載されています。

不動産の査定を受ける

実勢価格の目安を正確に知りたい方は、不動産会社の査定を受けるのがおすすめです。不動産の査定では、土地の立地や形状を調査し、市況や周辺環境を加味した価格を査定額として提示してもらえるため、実勢価格にかなり近い価格がわかります。

まとめ

さまざまな不動産の評価の違いがあります。そのため、相続人が信頼する評価額が変わり揉める可能性があります。さまざまな評価額を参考に相続人の全員が納得できる価値を確定できればいいですね。

コメント

タイトルとURLをコピーしました