【市民法務:契約書の作成/和解契約書】~行政書士試験合格者が解説~

市民法務関係

今回の記事も行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今回も前回に引き続き契約書の中で最も良く使われている賃貸借契約について記事を書きたいと思います。今回で賃貸借契約書は最後となります。

和解契約とは

和解契約とは、双方で紛争が生じた 場合に、お互いが譲り合うこと(これを「互譲」といいます)によって、その紛争を解決する契約をいいます。
和解契約では、互譲が前提とされており双方が譲歩をすることで紛争が解決されます。通常、民事事件に関する紛争が生じた場合は、 民事訴訟を提起して、勝訴判決を得て、 さらに必要であれば裁判所を通じて強制執行を行い、ようやく自らの権利を実現できることになります。訴訟は年単位で時間がかかるもので、 その結果が必ず勝訴かもわかりません。 強制執行もうまくいくとは限りません。 しかし、和解契約であれば、互いに譲るため自身も一定の痛みを伴うものの、 紛争を早期かつ柔軟に解決することが期待できます。和解契約書の表題は単に和解契約書とすることもありますが、示談書とすることもあります。
厳密には、「和解書」は裁判所の手続で用いられることが多く、「示談書」や「合意書」という言葉は裁判所を通さない場合に用いられています。また、「示談書」は交通事故、不倫、刑事事件などの損害賠償義務が問題となる場合に用いられることが多く、「合意書」はそれ以外の様々な権利義務について合意する場合に用いられています。

和解契約における合意内容

和解契約で合意できる内容について制限はありません。紛争とは関係ない事項を互譲の材料としてもよく、複数の紛争がある場合には、別の紛争を互譲の材料としてもよいとされます。ただし、強行法規に 反する内容を和解契約の内容とすることはできないので注意が必要です。

調停や裁判上の和解

裁判所で行う民事調停という手続きでは、裁判官を含む調停員という専門家が紛争当事者双方の話を聞きながら、 和解による紛争の解決を目指します。また、民事訴訟においても、必ず判決をするわけではなく、途中で裁判官から和解を勧められることがあります。このように裁判所が関与する場合は、 当事者同士で和解契約書を作成するのではなく、裁判所が、調停調書や和解調書という和解契約に代わる書面を作成します(内容自体は和解契約書に似通ったものです)。これらは、確定判決と同一の効力を有するものとして扱われ、それらに基づき強制執行することも可能です。これは訴訟・調停によらず当事者同士で作成した和解契約書では、得られない効果です。

刑事事件における和解契約・示談の利用

民事上の紛争(交通事故、離婚、相続、その他会社間の紛争)以外に、刑事事件でも、和解契約が締結されることがあります(刑事事件では特に「示談」と呼ばれることが多い)。主に加害者である被疑者・被告人が被害者に示談をし、被害弁償や慰謝料として示談金を支払うことがあります。 被害者も示談金を受け取る代わりに「刑事処罰を求めない」「被害届や告訴 を取り下げる」と記載することもあります。
刑事事件において示談が成立していると、刑事裁判にかけるために起訴するかどうか、あるいは有罪判決が下される場合の刑の重さといった判断において、被疑者・被告人には有利に働きます。

和解契約書の具体的条項

「A(以下「甲」という)とB(以下「乙」という)とは、甲が乙に対して●年●月●日に 1000万円を貸付けたとしてその返還を乙に求めている件(以下、「本件」という)に ついて、次のとおり和解契約を締結する。

和解金

第1条 乙は、甲に対し、本件に関する解決金として、合計金100万円の支払義務 があることを認める。

和解金の支払

第2条 乙は、前条の金500万円の解決金を、令和□□ 年△△月末日限り、下記の 銀行口座宛に振り込む方法で支払う。但し、振込手数料は乙の負担とする。

秘密保持等

第3条甲及び乙は、本和解契約書を締結した事実及びその内容について、一切 第三者に口外しない。

また甲及び乙は、本件に関して、互いに相手方の信用又は名誉を毀損するよう な言動を、今後一切行わない。

清算条項

第4条甲及び乙は、本件に関し、甲乙間には、本和解契約書に定める他一切の債 権債務関係が存在しないことを相互に確認する。

最後に

以上を証するため、甲及び乙は本契約書を2通作成し、それぞれ1通ずつ保有・ 保管するものとする。

まとめ

今回は和解契約書という特殊な契約書についてご紹介しました。裁判での判決を待たずにお互いが納得した形で契約できれば量力が減りますね。

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