今回の記事も行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今回の記事からは契約書ではなく、内容証明書について記事を書いていきたいと思います。内容証明書とは郵便で、相手に自分の意志を伝えることです。行政書士が関わることで、専門家がついていると相手に思わせることができます。今回はその内容証明書について詳しく記事を書きます。この記事を読むことで、内容証明書とは何かを知ることができます。
内容証明書とは
内容証明郵便とは、「いつ、誰が誰宛に、どんな内容の文書を送ったか」を公的に証明できる郵便のことです。内容証明は、郵便局で手続きすれば、個人でも送ることができます。
内容証明はあくまで、送付した年月日・送付した内容・送付した事実を証明するものです。内容証明を送ることで、強制的に相手を記載内容に従わせることはできません。しかし、内容証明を送ることは、法的手段に訴える前段階ともいえ、「これ以上問題解決が長引くようならしかるべき措置をとる」という強い意思を相手に表明することが可能です。内容証明は、裁判においても証拠として提出されることも少なくありません。通常の郵便であれば相手に無視されて終わっていたものが、内容証明を送ることで、事態が一気に動き出すというケースは多々あります。必要に応じて内容証明を活用し、トラブルの早期解決を目指したいところです。
内容証明の2つの役割と使用シーン
内容証明書の実際どのように活用するのか2つのケースをご紹介します。
自分の意思を伝えた事実を証明する場合
たとえば、商品の購入契約を一定期間であれば解除できるクーリング・オフ制度を利用するためには、相手に「契約を解除したい」という意思を伝える必要があります。
その際に利用されるのが内容証明郵便です。「契約解除の意思を伝えた」と法的に保障されるため、「聞いていないので契約を解除しなかった」といった言い逃れを防ぐことができるのです。仮に相手が頑なに契約解除を認めず、訴訟になったとしても、内容証明を証拠として提出すれば、クーリング・オフ期間内に契約解除をしていることが認められます。クーリング・オフに限らず、さまざまな未払い金の請求や、契約の取り消し請求などについても、内容証明を利用することで、「言った、言わない」という問題をクリアにできるのです。
被害事実を主張して証拠としたい場合
また、内容証明に記載された内容が、訴訟の際の証拠として扱われる場合もあります。
たとえば、「こうした被害に対し、300万円の慰謝料を要求する」という内容証明を送った場合を考えてみましょう。この際、相手が被害内容そのものについて否定せず、「100万円に減額してほしい」とだけ返答してきた場合、これは被害の事実があった証拠のひとつとして扱われるのです。もちろん、ほかにも被害内容を裏付ける証拠を用意する必要はあるものの、「相手が事実を認めた」ということを証明するという場合にも内容証明は重要な役割を果たします。
そのため、反対に自分が事実に反する内容証明を受け取った場合は、自分も内容証明で反論する必要があることに注意してください。
内容証明書の注意点
注意!内容証明を送る際に気を付けたいこと
内容証明書の効果は理解できたと思いますが注意点があるため確認しましょう。
①書いた内容を強制的に行う効果はありません。たとえば、内容証明に「期限までに履行してもらえない場合は財産を差し押さえる」と書いたとしても、内容証明で通知したことを理由に差し押さえすることはできません。
②相手に「これは脅迫だ」と主張されれば、脅迫罪や恐喝罪になってしまうこともありえます。文面を書くときは高圧的な表現にならないよう注意が必要です。
③当然のことではありますが、嘘の内容を書いてはいけません。たとえば、お金を貸していないのに「貸した100万円を返金するように」などと書くと、詐欺罪に問われる可能性があります。さらに、相手と訴訟になった場合、「このような嘘の内容を送ってくる信用できない人だ」と主張され、自分自身の信用性を損なう証拠になってしまうことも考えられます。
④送った内容証明の内容は撤回することができないので、必ず事実に基づいた正しい内容を記載しましょう。実際に送付する際には、弁護士や行政書士などの専門家に相談するほうがベターです。専門家が依頼者の代理人として内容証明を送ることができるため、相手へより強いプレッシャーをかけることにもつながります。内容証明書の書き方
まず「内容証明郵便にどのような用紙を利用するのか」といった疑問を持つかもしれませんが、内容証明郵便はどのような用紙を利用してもかまいません。
通常のコピー用紙にプリントアウトしたものでも問題ありません。ただし、「1行の文字数、1列の文字数に制限があること」には注意してください。縦書き、横書きいずれでも、「1行20字以内、1枚26行以内であること」が必要です。なお、内容証明郵便には、資料等を同封することはできません。そのため、資料を送りたい場合は別途普通郵便等で送ることが必要です。
内容証明郵便の記載項目
- 文書の表題
- 通知内容
- 日付
- 相手方の住所、氏名(相手方が法人の場合は住所、社名、代表取締役名)
- 差出人の住所、氏名
内容証明郵便を書いた後は、内容証明郵便を発送する手続きが必要です。「内容証明郵便の出し方の手順」は以下の通りです。
- Step1:内容証明郵便を3部準備する。(※訂正は2重線で訂正し、欄外に何文字削除、何文字追加を記載し差出人の押印する。)
- Step2:内容証明郵便3部の署名し、横に押印する。
- Step3:内容証明郵便が2ページ以上になるときは、ホッチキスでとめて、割印を捺印する。
- Step4:封筒に相手の住所、氏名と自分の住所、氏名を書く。
- Step5:郵便局に持参して、発送する。
- Step6:控えを保管する。
内容証明を送る場合、通常の郵便料金と一般書留の加算料金に加え、内容証明の加算料金がかかり、配達証明を付ける場合には配達証明の加算料金がかかります 。加算料金は下記の通りです。
一般書留の加算料金 | 480円(損害要償額が10万円までのもの) |
---|---|
内容証明の加算料金 | 1枚:480円、2枚目以降290円増 |
配達証明の加算料金 | 350円(差出時) |
たとえば、25gまでの定形郵便で送った場合、費用は下記の通りとなります。
郵便料金:84円+一般書留の加算料金:480円+内容証明の加算料金:480円+配達証明の加算料金:350円
=合計1,394円
また、速達で送った場合は円(250gまで)が追加でかかります。
内容証明書を出した後は…
内容証明を出した後はどのような流れは相手の出方によって様々ですが、イメージとして次のことが言えます。内容証明を送る際は訴訟を起こす前であることが多いため、訴訟を前提にしつつ内容証明を出した後の流れについて解説します。
①交渉
内容証明を送付後の相手のリアクションは
「返答」
「無視」
の2つです。相手から連絡してくれば、そのまま解決に向けて交渉していくことになります。交渉は、事実の確認からはじまり、こちらの要求と相手の回答をすり合わせていきます。例えば、会社に未払い給料の支払いを請求し、会社側が「その8割の金額なら支払う」と提示してきたとします。この金額で納得すれば交渉が成立します。交渉が成立すれば、どのような内容で決着したのかをまとめた合意書を作成します。ただし、金銭の支払いが絡む場合は、公正証書を作成した方がいいかもしれません。
交渉が決裂したりそもそも内容証明を無視された場合は、次なる手段に移行します。
②訴訟
内容証明で通知した内容にもよりますが、内容証明がうまくいかなかった場合は訴訟に向けて動くことになります。訴訟を行うときは、60万円以下のお金を請求する少額訴訟と、それ以上のお金などを請求する民事訴訟の2つの手段のどちらかを選択します。
まとめ
今回は内容証明書の具体的な書き方についてご紹介しました。要領さえわかれば誰でも出すことが出来る郵便サービスです。一度試してみるのもいいかもしれませんね。
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