【市民法務:内容証明書が届かない場合】~行政書士合格者が解説~

市民法務関係

今回の記事も行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。前回の記事に引き続き、内容証明書について記事を書いていきたいと思います。今回は内容証明書が届かない場合の事例について紹介します。この記事を読むことで、内容証明書の届かない理由を知ることが出来ます。

内容郵便が届かないと

契約を解除しようとするときは「契約を解除します」という意思表示をしなければなりません。また、賃料を値上げするときは「賃料を○月○日より金○○○円に値上げします」という意思表示をしなければなりません。しかし、意思表示は相手に届かなければ効果はありません (民法97条 1項)。
例えば普通郵便で契約解除の通知を出すと、郵便配達人はそれを相手の家の郵便受けにポンと入れておくだけですから、差出人はその通知が相手に届いたかどうかわかりません。配達証明付き内容証明郵便で出した場合には、郵便配達人は、郵便受けに入れっ放しにせず、受取人に直接渡し、受取人から受取印をもらう方法で配達します。したがって、差出人はその内容証明郵便がいつ配達されたかを、郵便局で証明してもらえます。
そのため契約解除、賃料増額請求、債権譲渡の通知、相殺の通知、借家契約の更新拒絶の通知、時効の進行をストップさせるための請求、抵当権消滅請求の通知等、その意思表示が相手に届いたことを証明できないと困るような重要な通知は、なるべく配達証明付すことがいいでしょう。しかし、配達証明が届かないと相手に意思表示できずに困ります。どのような場合に配達証明が届かないのかをご紹介します。

受取り拒絶

相手に届かない理由として相手が受取りを拒否した場合が考えられます。 配達された郵便物の受取りをことわることができるのです。その場合には、差出人のもとに、名宛人が受取りを拒否しましたのでと書いた紙きれがついて、内容証明郵便が戻ってきてしまいます。
配達したのに正当な理由なく受取りを拒否された場合には、相手は手紙の中味を見ていないわけですが、法律的にはその通知は相手に到達したということになります。正当な理由のない受取り拒絶は、到達したのに、受取人は自分の意思でその郵便物の受取りをことわったわけですから、まさにその通知を知ろうとすればできる状 態になっているため、到達したといえるのです。
もし名宛人本人が受け取らずに、同居人が受け取った場合にも、やはりそのとき到達したことになります。そのため正当な理由なく同居人が受取りを拒絶しても、本人が拒絶したのと同じ扱いです。

留守で配達されない場合

相手が留守のため配達されないで戻って来ることがあります。普通郵便で出すと、相手が留守でも郵便受けに放り込んで終わりです。 しかし、配達証明付きの内容証明郵便は相手に渡し、受領印をもらわな ければいけないため、留守だと郵便配達人は配達できません。
その配達証明付きの内容証明郵便を郵便局に持ち帰りますが、そのとき留守宅に、あなた宛ての書留郵便を配達しましたが、留守なので、郵便局で保管していますから、7日以内に取りに来てくださいと書いた紙を置いていきます。その人が郵便局へ取りに行けば問題ありませんが、この紙を見たのに取りに行かないときが困まります。
郵便局では7日間待って取りに来ないと、その内容証明郵便に「○月 ○日配達の際不在でした。不在のため郵便局に保管しましたが、保管期間を経過しましたので、お返しします」と書いた紙をはりつけて、差出人に戻してしまいます(内国郵便約款88条)。
この場合には、その通知は相手に届いたことになりません。受領拒絶は、受取人に配達したのに、受取人が受け取らない場合であり、留守の場合は受取人が不在でその郵便物を渡せなかったのですから、違います。 郵便物を受取人の支配圏内に置くことができたかできなかったかの違いがあります。
こういう場合には、直接相手に会って口頭で伝えるか、あるいは文書に書いて直接手渡すしかありません。相手に会うときは、将来、立ち会った人が裁判にでもなったら証人になれるよう、2人以上で行くことが望ましいでしょう。また、文書を渡すときには文書の受領証をもらうようにします。
内容証明郵便が不在で戻った場合でも、正当な理由なく通知の到達を妨げたといえるようなとき、受取人が不在配達通知書から差出人や通知の内容を推測でき、かつ内容証明郵便を受領することができた場合には、到達したといえるケースもあります。
貸金請求や売掛金請求のように、相手に対し心理的圧力をかけ、トラ ブルを有利に解決するために内容証明郵便で出したのに、受取り拒絶や留守のために届かないというときには、内容証明郵便のコピーを普通郵便で送ったらいいかもしれません。

居所不明のとき

相手が倒産した場合等には、こちらから出した内容証明郵便が転居先不明で戻ってくることがあります。相手の居所がわからないから、契約解除できない、債権譲渡ができない、相殺できないとなったら困ります。そんな場合には公示送達という方法を利用します。(民法98条、民事訴訟法110条以下)。いくら捜し回っても相手の居所が不明なときには、公示送達の方法をとるしかありません。

まとめ

今回は内容証明書が届かない理由と対処についてご紹介しました。参考にしてもらえればと思います。

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