【市民法務:契約書の作成/収入印紙/押印について】~行政書士試験合格者が解説~

市民法務関係

前回の記事から引き続き、行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今回は前回に引き続き、契約書の実際的な概要について記事を書きたいと思います。この記事を読むことで契約書の重要な収入印紙や押印について知ることが出来ます。

収入印紙を貼る理由

契約書や領収書といった一定の書面に収入印紙を貼る場合があることは知っていると思いますが、この収入印紙は何のために貼る必要があるかご存じでしょうか。
印紙税法という法律によっ て、一定の契約書については印紙税という税金を納付する義務が課されて います。具体的には、印紙税法に定められている種類の契約書には印紙税が課税されます。
この印紙税の納税方法は印紙税法に定められています。国が発行する収入印紙を購入し、その収入印紙を契約書の紙(台紙)に貼り付けて、消印をするという方法です。なお、印紙税は原本の作成に課税されるため、締結した契約書のコピーをつくっても課税はされません。

収入印紙一覧

もし貼らないと…

印紙税が必要な契約書に収入印紙を貼らなかった場合には、税金を納めていないということになります。しかし収入印紙を貼っていない場合であっても、その契約書の契約の成立や内容を証明する証拠能力がなかった り、または証明する契約が無効となったりすることはありません。
しかし、契約書に収入印紙を貼っていないときには、本来納付すべき印紙税の額+その2倍分 (すなわち3倍分) の過怠税が課せられます。また収入印紙を貼っていて消印をしていなかったときは印紙税の額と同額分の過怠税が課せられます。印紙税は、契約書などの書面を作成したことに課される税金のため、電子契約の場合には、書面が作成されていないので、印紙税は課税されません。

つぎに収入印紙の費用を誰が負担するのかについては、印紙税法上「印紙税は書面の作成者に課税される」と定められています。このため契約書であれば、契約書を作成・締結する契約当事者が納税者になります。例えば二当事者間の契約書であれば、印紙税は二当事者に課税されます。なお印紙税は、契約書の原本を作成したことに課税される税金であるため、 原本を複数作成した場合には、その作成した通数分だけ課税されることになります。

実印とは

公的に印鑑登録をしている印鑑のことを実印といいます。個人であれば市役所や区役所で印鑑の登録ができます。日本では、「記名押印」という制度として存在しています。この記名押印という制度は、簡単にいえば、記名について署名と同じ効力を持たせるために、押印を行うというものです。「署名=記名押印」です。
「押印」とは、印鑑を押すことで、指に朱肉をつけて紙に押しつけた(拇印)は、 記名押印における「押印」とは認められません。指は印鑑ではないからです。 このため、印鑑を持っていない場合に は、拇印ではなく署名をしてもらえば足りるということになります。また、印鑑を実際に紙に押しつけたものだけが記名押印となるため、名押印をした紙をカラーコピーしたり、 印刷したりした場合は、記名押印にはならないため注意してください。

認印と実印の違い

実印を押印した場合も認め印を押印した場合も、記名押印における「押印」 としての効力が生じます。したがって、 契約書の記名押印欄における押印が実印でも認め印でも、特に契約書として契約を証明する証拠能力に違いは生じません。もちろん、契約書が証明する契約の効力にも違いは生じません。しかし、実印を押すことにより、押されている印鑑が「その人の印鑑」であることを公的に証明することができるという点に実印制度のメリットがあります。契約書における記名押印を考えた場合、「押印」とは、①「その人の印鑑」が、②その人の意思によって押されている、という2点が満たされている必要があります。 そして、実印は認め印と異なり、①の 「その人の印鑑」であることを公的に証明することができます。

契約書に印鑑を押印するのは、必ずしも記名押印の場面だけではありませ ん。大きく分けると、①契約書の形式 を整える場面、②契約書の記載上、加除修正の後を残してしまう場面、③納税の場面の3つになります。なお、これらの場面で押印に用いる印鑑は、必ずというわけではありませんが、記名押印の際に用いた印鑑と同じ印鑑を用いることが通常の実務です。

まとめ

今回は契約書作成時に必要な、収入印紙と実印についての説明をしました。ルールとして知っている方は多いと思いますが、何故必要かが分かってもらえたらと思います。

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