前回の記事から引き続き、行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今回は、契約の自由に記事を書きたいと思います。この記事を読むことで契約根本の理解を深めることが出来ます。
契約の自由とは
契約自由の原則とは、私法の一般原則の1つであり、その根拠は私的自治に求められます。広義では、以下の4つのことを意味します。
1.契約締結の自由です。契約を締結するか否かを、当事者は自由に決めることができます。
2.相手方選択の自由です。当事者は、契約をする相手方を自由に決 めることができます。
3.方式の自由です。契約を締結するにあたり、原則として、いかなる方法・方式で契約を締結することも自由とされています。契約書を締結してもいいし、しなくてよい、ということになります。
4.契約内容の自由です。狭義の契約自由の原則ともいわます。契約を締結す場合に、その内容については、当事者がそれで納得できるのであればどのな内容であったとしても当事者が合意することによってその契約は有効のとして認められる(裁判所の判断においても、最大限尊重される)という原則です。
何故認められるのか
(狭義の)契約自由の原則が認められている理由は、あくまで契約の効力は、契約当事者間にしか生じないものであるため、当事者が合意するのであれば、いかなる内容の契約であっても、 それに対して制約を課す必要はないからです。この原則により、合意された契約内容が、実際にはどちらかに一方的に有利な内容であったり、常識的にはあまり考えにくい内容であったとしても、 原則として効力が認められます。
法律の規定とは異なる契約をした場合
(狭義の) 契約自由の原則が認められることによって、当事者が法律の規定と異なる内容の契約を締結した場合には、原則として、契約の内容が法律の規定に優先することになります。このように、当事者が合意した契約 内容のほうが優先する効力を有する法律の条項を、任意規定といいます。
もっとも、契約自由の原則にも限界があり、いくら当事者間にしか効力を有しない契約であっても、法 律の条項に反する内容の契約の効力は認められないという法律の条項もあります。このような法律の条項は強行規定といいます。法律の条項どおりとなることが強行される規定という意味です。
(任意規定の例)商法509条に優先する契約の条項
取引基本契約書などにおいては、商法509 条の適用を排除す るために、以下のような条項が設けられることが多い
(個別契約の内容)
第2条 甲乙間の個別契約においては、発注日、目的物の名称、数量、単価、引 渡期日、引渡場所その他必要な事項を定めるものとする。
2 個別契約は、乙が書面、FAX、メールその他の方法により注文書を甲に交付 し、これに対して甲が注文請書を乙に交付することにより、成立する。
強行規定は、大きく分けて2種類に分類されます。1つが、基本的な社会秩序に関する法律の条項です。例えば、民法に定める所有権などの物権や、抵当権などの担保物権の条項、さらに親族や相続に関する条項などが、強行規定に該当します。
もう1つが、相対的に弱い立場の当事者を保護・救済する観点から定められている法律の条項です。例えば、借地借家法の条項や、労働基準法や労働契約法などの各種労働法の条項、さらに下請代金支払遅延等防止法の条項などのうち、いくつかの条項が強行規定であると解されています。
強行規定の具体例1:民法第90条(公序良俗)
公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。
強行規定の具体例としては、いわゆる民法第90条に規定された「公序良俗」があります。例えば、非常に極端な例ですが、殺人の請負契約は、当事者間に合意があったとしても、この民法第90条に違反する契約として無効になります。
強行規定の具体例2:借地借家法第9条
この節の規定に反する特約で借地権者に不利なものは、無効とする。
ここでいう「この節」というのは、「借地権の存続期間等」に関する規定です。なお、借地借家法には、同様の規定が、第16条、第21条、第30条、第37条にあります。このように、見出しとして強行規定である旨が明記されている法律は珍しいです。
まとめ
今回は契約書を作成する場合に重要となる、契約の自由と強行規定についてご紹介しました。契約書を作成するときには、その契約に関する法律を知る必要があります。その法律の範囲を理解したうえで、当事者間の契約を優先するのか出来ないのかを判断する必要があります。次回は、強行規定について更に詳しく解説します。
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