【市民法務:契約書の作成/契約書の条項について】~行政書士合格者が解説~

市民法務関係

今回の記事も行政書士の市民法務業務について書いていきたいと思います。行政書士の業務には、権利義務に関する書類の作成とその代理・相談というものがあります。その権利義務に関する書類の中で、契約書の作成と内容証明書についての記事を書いていきます。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、市民法務分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今回は前回に引き続き、契約の中身に記事を書きたいと思います。この記事を読むことで契約書の作成に必要な条項を作るにあたってのイメージをする出来ます。

契約には何を定めるか

契約に定めるべき意味がある事柄と は、任意規定とは異なる事柄か、法律の条項が何ら定めていない事柄になり ます。法律の条項どおりでよい事柄であれば、特に契約書に記載することに意味はありません。例えば、私たちがお店で食品を購入するとき、ふつうは 「食品を表示価格で売買する」こと以外は特に何ら合意していません。それ以外は法律の規定どおりでよいという契約をしていることになります。
しかし、ビジネスでは、法律の条項とは異なる内容や、法律に規定がない事柄を当事者間で合意しておきたい場合があります。そのため契約書に記載すべき内容となります。
実際の契約書の各条項をめぐる交渉は、それぞれの当事者が、法律の規定よりも有利な条項を定めようとして条項案を互いに提示することが多くみられます。そして、各当事者が相手方の提示案を受諾できない場合には、その事柄については法律の規定どおりとする意味で、その事柄について定めた条項は契約書に設けない(案から削除する)ことが行われることもよくあります。

契約書の基本的な構成

契約書を初めて作る人には 最初に疑問に思うことは、契約書の各条項はどのような考え方に基づいて、 どのような順序で並んでいるのかということだと思います。実は契約書は、作成するか否かも当事者の自由であることからすれば、各条項をどのような順序で記載するのか、ということについても何ら法律上の決まりはありません。
もっとも、契約書は必ず相手方との間で作成・締結するものです。このため実際は、一定の考え方、ルールのもとで各条項が記載されていることが通常です。
各条項は3種類に分けて、その順序で記載 していくという考え方が一般的です。

①この契約において何をするのか(当事者の履行すべき内容)の部分
②トラブルを予防したり、トラブルに備える部分
③一般条項(どの契約においても、同じような内容が定められている部分)

まず、①「この契約において何をするのか」(当事者の履行すべき内容)を定めている部分の各条項を、契約書の最初に記載します。契約の種類によって、記載すべき内容が大きく異なるところであり、契約書において一番重要な条項であるといってもいいでしょう。

土地売買契約の場合

第〇条(売買の目的)
甲はその所有する後記の土地(以下本件土地という)を乙に売渡し、乙はこれ
を買い受けるものとする。
第〇条(売買代金)
売買代金は、金 円(1㎡当たり金 円・
1坪当たり金 円)とし、支払期日を 年 月 日とする。
第〇条(手付)
乙は本日、本契約締結と同時に甲に対し手付金として金 円を
支払い甲はこれを受領した。
②この手付けは解約手付けとし、売買代金支払いの時にその一部に充当する。
第〇条(引渡し、登記)
甲は売買代金全額受領と同時に本件土地を引渡し、その所有権移転登記手続に
必要な書類を乙に交付し、 年 月 日までに登記を完了させる
ものとする。
②甲は、前項による引渡しの時までに隣地及び道路との境界、境界点を明示し、
乙はそれを確認する。

次に記載するのが、②契約当事者間のトラブルを予防したり、トラブルが生じたときに備えるための各条項です。実際にトラブルが生じることを予測してこれに対応する条項を設けておくことは極めて重要です。契約の効力に関する条項や、契約の履行に何らかの問題が生じた場合に備える条項などが記載されます。

第〇条(危険負担)
本件土地の引渡し前に甲、乙いずれの故意、過失によらずして本件土地の一部、
また全部が滅失または毀損した場合は本契約は効力を失い、甲は手付金および預
かった金員全額を遅滞なく返還しなければならない。
②公用徴収、建築制限、道路編入等の負担が課せられたときも同様とする。
印紙
第 〇条(契約解除)
甲、または乙の債務不履行により本契約が解除された場合、乙の債務不履行に
よる時は、乙は手付金を没収されても異議なく、甲の債務不履行による時は
甲は手付金の倍額を乙に返還しなければならない。


最後に③一般条項と呼ばれる各条項です。一般条項の部分は、どの種類の契約であっても、ほぼ同じような内容が毎回定められることが多いです。

第〇条(契約上の地位又は権利義務の譲渡)
売主及び買主は、相手方当事者の書面による事前の承諾を得ない限り、本契約上の地位又は本契約に基づく権利義務を直接または間接を問わず、第三者に譲渡、質入、処分又は移転してはならない。
第〇条(印紙代)
本契約書に貼付する印紙代の費用は、買主が全て負担するものとする。

条項の作り方について

契約書の始めに位置する「この契約において何をするのか」(当事者の履行 すべき内容)についての条項は、各契約において一番重要な部分です。
例えば土地の売買契約であれば、売主は土地を「渡す」という条項を記載することになり、買主は対価である売買代金を支払うという条項を記載することになります。また、土地を実際に引き渡す前にどちらかの当事者が測量を行い、その結果(判明した実際の土地の面積)に よって、売買代金を変動させるという条項を記載することもあります。
契約自由の原則により、契約当事者は合意することによって、履行すべき内容につきどのような内容であっても有効に定めることが可能となります。
契約書の条項の「書き方」について、 こう書かなければならない、というルールがあるわけではなく、明確に記載してあれば何も問題はありません。ただし、明確に記載するための1つの方法として、5要素ごとに作っていく方法があります。

この5要素で条項をつくるにあたり、 一番重要なことは主体の選択です。この主体の選択にあたっては、3つの ルールを守ることが重要です。
1、主体は必ず契約当事者である必要があることです。契約は契約当事者の間でのみ効力を有するもので すので、契約において契約当事者ではない第三者が「●●をする」と記載しても、何の効力も発生し得ないことに なります。
2、できる限り主体を単独で条項をつくることです。例えば、売買契約の履行の場面では、通常、目的物 の引渡しと代金の支払いが同時に行われます。このような場合には、売主は買主に対して目的物を引渡すという条項と、買主は売主に対して代金を支払うという条項を、それぞれ作成することを意味します。理由は、主体を複数にして条項をつくろうとすると、その 詳細についてどちらが責任をもって履 行するのかを明確に記載することが困難となるからです。
3、可能な限り義務者を主体とすることです。言い換えれば、条項は受け身の文章ではなく、能動態の 文章で記載するということです。「~する」という文言において、「~しなければならない」とか「〜 する義務がある」という表現にする必要はありません。契約書の条項として、 「~する」と記載すれば、〜する債務を負担することになります。

代金に関する条項の作り方

条項のうち、一番契約書でよく用いられているのが対価 (代金)を支払うという条項です。一般的に対価(代金)に関する条項は、「対価がいくらである」ということを明記する条項と、その対価をいつどのように支払うのかという条項の2つに分かれます。このうち後者の条項が、契約書においてもっとも多く用いられてい ます。

例:○○は××に対し、○○の売買代金を令和○○年〇月月末日限り、××の指定する口座に振り込む方法により支払う。

この対価の支払条項は、通常、法律の規定(任意規定)とは異なる内容を定めている条項となります。まず、支払期日を定めている点があります。仮にこのような条項を設けない場合には、法律上は原則として契約締結時に対価(代金)の支払義務が発生することになります。ビジネスにおいては、通常は対価(代金)は後払いにすることが多いため、契約書でそれとは異なる内容を定めている条項となります。
次に、銀行口座宛に振り込む方法により支払う旨を定めている点です。民法は、金員の支払いは持参払いであり、相手方の住所地に現金を持って行くなどして支払うことを原則として定めています(民法 484条1項)。しかし現在のビジネス実務においては、通常、銀行口座への振 込の方法がとられていることから、事業者間の契約では通常、法律の規定とは異なる支払い方法を定めています。
なお民法は、支払いに要する費用 (例えば、銀行口座への振込費用)について、支払いをする者が負担するという原則を定めています(民法485条)。 ただし、支払いを受ける側が負担することを合意することも可能です。

(供託)
第四百九十四条 弁済者は、次に掲げる場合には、債権者のために弁済の目的物を供託することができる。この場合においては、弁済者が供託をした時に、その債権は、消滅する。
 弁済の提供をした場合において、債権者がその受領を拒んだとき。
 債権者が弁済を受領することができないとき。
 弁済者が債権者を確知することができないときも、前項と同様とする。ただし、弁済者に過失があるときは、この限りでない。
(供託の方法)
第四百九十五条 前条の規定による供託は、債務の履行地の供託所にしなければならない。
 供託所について法令に特別の定めがない場合には、裁判所は、弁済者の請求により、供託所の指定及び供託物の保管者の選任をしなければならない。
 前条の規定により供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければならない。

まとめ

契約書の中身についてイメージはつきましたでしょうか。契約書の雛形などを参考にこの記事を読んでいただけるとよりイメージが付きやすいと思います。

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