【生活保護法ってどんな制度??】歴史や考え方について~現役福祉職公務員が分かりやすく解説~

救済処置支援

前回までの記事で、社会保障制度や生活困窮者自立支援制度、社会福祉協議会が行う貸付制度などご紹介してきました。そういった制度を利用してもなお、生活が困窮している状態の場合に最後のセーフティネットとして「生活保護法」があります。生活保護法とは、日本国憲法25条1項の生存権「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」からきており、この生存権はみなさんもご存じなのではないでしょうか。生存権には国の責務を唱えただけのものであり、決して生存権が国民の最低生活保障したものではありません。そこで、憲法25条1項を元に法律として「生活保護法」により、国民の最低生活の保障がされることになりました。このブログでは「生活保護法」の保障内容や基準についてご紹介していきます。今回は生活保護の大枠である生活保護の成り立ちと扶助の種類についてご紹介します。

生活保護の歴史

日本には生活保護法が成立する前から生活困窮者がいる場合は親族間で助け合うという考え方がありました。親族間で助け合えない時に国の支援が行われます。
正式に日本の困窮者保護の法律が出来たのは、1874年(明治7年)に明治政府によって、「恤救規則」が始まりです。済貧恤救は「人民相互の情誼」によってなされるべきものとしてますが、相互扶助が期待できない【無告の窮民】のみを国家が公費で救済することとしました。無告の窮民とは①廃疾者 ②70歳以上の老衰者 ③疾病者(病人) ④13歳以下の孤児とされています。当時の国の救済措置としては米代の支給であったようです。その後、1946年9月に「生活保護法(旧生活保護法)」が制定されます。この(旧生活保護法)で現在の生活保護法の給付内容が確立されましたが、現在との違いは「欠格条項」が存在したことです。
 欠格条項はア)国民の税金を惰民養成に使ってはいけないという厚生省の考えのもと、労働能力のあるにも関わらず勤労をしない者や素行不良者は保護の対象から外すイ)「保護請求権」や「不服申し立て」については積極的に認めなかった。ということです。
 その後現在の生活保護法が1950年に制定されます。旧生活保護法の改善として、「欠格条項の廃止」や、民生委員を「協力機関」とし、代わりに社会福祉主事を補助機関に置くことになりました。この欠格条項の廃止には無差別平等の考え方から誰でも最低生活の保障を受ける権利があることによるものです。

くまくまさん
くまくまさん

昔から困窮者を助けようとする考えが日本に存在していたんですね。

生活保護法の重要な原理・原則

生活保護法の法律には、生活保護法の原理原則や生活保護を受けた時の権利・義務などが書かれています。生活保護法の条文に沿ってご紹介していきます。

生活保護法の原理

【第一条】この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。

これは国の責務として最低生活の保障を謳っています。重要な部分は困窮の程度に応じた保護であり、自立助長をさせることです。そのため、1人ひとりの給付金額が違ったり、その人に合わせた自立させるための支援が行われます。

【第二条】すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、この法律による保護(以下「保護」という。)を、無差別平等に受けることができる。

無差別平等の原則です。ここで注目してほしい事が「すべての国民」と書かれていることです。これは外国籍の方は生活保護法の対象外であるということです。そこで外国籍の方の救済処置については後日説明します。

【第三条】この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持することができるものでなければならない。

最低生活とは人によって価値観や生活環境で変わる抽象的なものです。この法律では健康で文化的な生活水準であるとされています。

【第四条】保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。
 民法(明治二十九年法律第八十九号)に定める扶養義務者の扶養及び他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われるものとする。
 前二項の規定は、急迫した事由がある場合に、必要な保護を行うことを妨げるものではない。

生活保護を受ける前や受けてからでも、あらゆる社会保障制度の利用や親族からの支援を求めなければなりません。保護を受らけれるから何もしなくてもいいと言った事にはならないので注意が必要です。また、あらゆるものの中には、働く能力も活用する必要があります。

このように生活保護法の基本原理として「国家責任の原理」「無差別平等の原理」「最低生活の原理」「保護の補足性の原理」の4つが掲げられております。

まとめ

今回は生活保護法の大本である歴史や原理(考え方)についてご説明いたしました。日本は福祉国家と呼ばれるとても手厚い保障制度が行われています。その中で最後のセーフティネットとして生活保護法がありますが、生活保護に頼って何もしなくてもいいという物ではなく、自立に向かうための一時的な生活保障ということです。また生活保護を受けたとしても、あらゆるものの活用が求められるため、資産の売却や親族からの支援、求職活動など出来る限りのことを行う必要があり、保護の制度以外でそういった支援がなされます。次回は生活保護法の原則や権利・義務などをご紹介します。難しい話が続くかもしれませんが、生活保護のイメージが変わると思いますので是非ご覧ください。

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