【建物を売ったのにお金が無いから払えないって言われた⁉】債権者保全について~行政書士合格者が分かりやすく解説~

民法

売買契約により、相手に何かを渡したとしても相手が無資力(お金がない)状態であり、代金を支払ってくれなかったらどうしますか??そんなことはないとは思いますが、相手の金銭状況を確認してから売買を行うわけではないので、契約後に問題が起こることになります。そんな時に債権者を守るため、民法では債権者代位権と詐害行為取消権を規定しています。今回は債権者保護の観点から民法を説明していこうと思います。この記事を読むことで困った債務者から支払いを受けれるかもしれません。
今回も行政書士試験合格に必要な知識の中から皆さんの日常生活にかかわり合いのある民法についてご紹介していけたらと思います。行政書士は争いのある法律行為は行えませんが、様々な法律を駆使した権利義務に関する書類の作成や事実証明に関する書類の作成を行います。その中で民法とは一般私法であり、人間の社会生活における個人の財産関係や家族関係を規律するルールの役割があります。
この記事は、法律に興味がある方、行政書士試験の合格を目指す方などに参考になる内容になっています。

債権者保護

債務者が債務を弁済(支払い等)しないとき、債権者は裁判所に訴えて債権の存在を確認してもらい、強制執行による手続きを行い自己の債権を回収することが出来ます。この強制執行に備えて、債務者の強制執行になる財産を確保する制度として債務者代位権と詐害行為取消権があります。基本は債務者の財産は債務者の自由ですが、債権者の利益保護をする必要があるため民法に定められています。

債権者代位権

債権者代位権とは、債権者がその有する財産権を行使しない場合に、債権者が自己の債権を保全するために債務者に代わり、自己の名において債務者の権利を行使して、債務者の責任財産の維持、充実を図る制度です。

債権者代位の要件

①被保全債権が存在すること…代位権を行使する際に債権がある必要があります。
②債務者が無資力であること…保存行為の場合は無資力でなくても良い
③債務者が自ら権利を行使しないこと…債務者が別の債権があるにも関わらず行使していないため債権者が代位します。債務者が自ら行使することも可能です。その場合は債務者から債権を回収することになります。
④債務が弁済期に達していること…保存行為の場合は弁済期前でも良い
⑤被代位権利の対象であること…一身専属権や差押禁止債務は出来ません。

債権者代位の効力

1被代位債権が金銭の支払い請求である場合
相手方に対し直接支払いを求めることができます。

2被代位債権が物の引き渡し請求権である場合
動産の場合はその引渡しを自己に対して直接求めることが出来ます。

3被代位債権が不動産の登記請求権の場合
債務者の下に登記を戻すだけになります。直接自分に登記を変更することは出来ません。

行使の方法

債権者代位権は裁判外でも裁判上でも可能です。債権者自らの名において権利を行使します。自己の債権の範囲でしか行使することが出来ません。例えば10万円の債権があれば10万円の部分しか行使することが出来ません。

詐害行為取消権

詐害行為取消権とは、債務者が債権者を害することを知っていて行為をした場合、債権者がその行為の取消しを裁判所に請求することが出来ます。

詐害行為取消権の要件

①被保全債権が金銭債権であること
②被保全債権が詐害行為前の原因に基づいて生じたものであること(債権が先にあって、相手がその債務を負いたくないから他の人に売ってしまう場合など)
③債務者が無資力であること
④財産権を目的とすること(遺産分割協議は可能だが、離婚による財産分与は不可。ただしあまりにも不相当の場合はその部分において可能)
⑤相当の対価を得てして行った財産処分は詐害行為と認められないが、害することを知っている場合は可能

詐害行為取消の効果

債務者及びすべての債権者に対して効力が及びます。その結果、取消された財産は債務者の責任財産として戻ります。

1目的物が金銭又は動産の場合
金銭又は動産を直接自己に引き渡すように請求できます。

2目的物が不動産の場合
債務者の登記を回復することになり、自己に登記を移すことはできません。

行使の方法

詐害行為取消権は必ず裁判での訴えが必要です。被告は債務者ではなく、受益者(図で言うと代物弁済を受けた人)か転得者(転売された人)になります。債務者に対しては訴訟告知をしなければなりません。
行使の範囲は自己の債権の範囲でしか行使することが出来ません。例えば10万円の債権があれば10万円の部分しか行使することが出来ません。債権代位と同じです。
訴訟期限があり、債権者が知った時から2年、詐害行為の時から10年を経過した場合は提起することが出来ません。

まとめ

今回は取引を行った際の債務が実行されない場合の債権者保護について説明いたしました。債務者が無資力になってしまったら何も回収出来ずに泣き寝入りになってしまいます。それが債務者の悪意だった場合は許せませんよね。そんな時に相手に別の債権があれば債務者代位をすれば良いでしょう。また、債務者に悪意があり、別の人に売った場合や転売された場合は詐害行為として裁判で取消が出来るため一度検討してみるのもいいと思います。裁判となるとさすがに弁護士の業務になりますので、お知り合いの弁護士に相談の上進めて下さいね。

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