行政書士試験合格に必要な知識の中から皆さんの日常生活にかかわり合いのある民法についてご紹介していけたらと思います。行政書士は争いのある法律行為は行えませんが、様々な法律を駆使した権利義務に関する書類の作成や事実証明に関する書類の作成を行います。その中で民法とは一般私法であり、人間の社会生活における個人の財産関係や家族関係を規律するルールの役割があります。
今回は民法の親族法の部分の中でも実子関係とその胎児の権利について焦点を当てた記事を書きたいと思います。
この記事は、法律に興味がある方、行政書士試験の合格を目指す方などに参考になる内容になっています。
嫡出子
民法には婚姻関係のある男女間に生まれた子を嫡出子と婚姻関係にない男女間に生まれた子を非嫡出子と分けています。嫡出子と非嫡出子との間では親権者の取り扱いや嫡出子を受ける子と受けない子で父子関係を否定する手続きを異にしています。
摘出子
摘出子とは、婚姻関係にある男女間に懐胎・出生した子をいいます。嫡出子は出生の時より嫡出性を取得する「生来嫡出子」と、一定の事由が生じることによって嫡出性が認められる「準正嫡出子」があります。
推定される嫡出子
妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されます。また、婚姻成立の日から200日後、又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定されます。
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摘出否認の訴え
嫡出推定を受ける子は、嫡出否認の訴えによらなければ、嫡出子の身分を奪われません。この嫡出否認の訴えは、夫が子の出生を知った時から1年以内に提起しなければなりません。
父を定めることを目的とする訴え
再婚禁止期間に(女性は前婚の解消又は取消の日から起算して100日を経過した後でなければ、再婚することが出来ない。)した結果、前婚による嫡出推定と後婚による嫡出推定とが重複する場合、裁判所が子の父は前夫か後夫か決定をします。
推定されない嫡出子
推定されない嫡出子とは、上記の推定期間外のため推定を受けないが嫡出子である場合です。この場合は親子関係不存在の訴えによって、いつでも誰からでもその身分を覆すことができます。
推定の及ばない子
推定の及ばない子とは、嫡出推定の及ぶ期間内に生まれたが、妻が懐胎期間中に夫によって懐胎することが不可能な事実のある時に出生した子をいいます。例えば夫が海外出張していた場合などです。この場合も親子関係不存在の訴えによって、いつでも誰からでもその身分を覆すことができます。
非摘出子
非摘出子とは婚姻関係にない男女間に生まれた子をいいます。嫡出でない子は認知によって初めて法律上の親子関係が認められます。
認知とは
認知とは嫡出でない子と父(又は母)との間に意思表示又は裁判所により親子関係を生じさせる制度をいいます。民法では父がその意思に基づいて自発的に認知する任意認知と子の認知の訴えによってなされる強制認知があります。
①任意認知
父が未成年者又は成年被後見人であっても、認知をする意思能力さえあれば足り、その法定代理人の同意は必要ありません。また、認知される側の承諾も不要です。ただし、胎児を認知する場合は母の承諾が必要となります。
認知は戸籍法の定めると届け出をすること必要があります。なお遺言によってもすることが出来ます。
②強制認知
子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することが出来ます。
準正認知
準正認知とは父母の婚姻を原因として摘出でない子が嫡出子たる身分を取得する制度をいいます。
①婚姻準正
父によって認知された摘出でない子がいる場合に、父母が婚姻することで、その子が嫡出子たる身分を取得することをいいます。婚姻準正の効果は婚姻の時から生じます。
②認知準正
父から認知されていない摘出でない子の父母が婚姻した場合、婚姻中に父が認知することでその子が嫡出子たる身分を取得することをいいます。認知準正の効果は認知の時から生じるとされていますが、状況によって婚姻の時からとされることもあります。
認知すると親子関係が成立するため戸籍上の身分を取得します。①認知した子に養育費を支払う義務が生じます。②認知した子が相続人になることができます。
胎児とは
胎児とは胎内にいる赤ちゃん(胎児)のことを指します。 胎児はまだ生まれていないため、権利能力は出生に始まるとされています。人は生まれながらに権利能力を有しているため、生まれる前の胎児には権利能力を有していないことになります。
しかし、胎児には①相続②遺贈③不法行為に基づく損害賠償については、すでに生まれたものとしてみなされます。これは胎児の両親、祖父母等が生まれる前に亡くなり、兄弟姉妹には相続権が生じるが出生の時期が多少遅かっただけで相続権や損害賠償権がないのは兄弟姉妹に比べ不公平が生じるため、胎児の権利保護のため認められています。
つまり、胎児が出生したときは親族が亡くなった時に遡って相続権や損害賠償権が認められるため、他の相続人に対して遺産の再分配等を請求することが出来ます。
ここで注意しなければならないのは、胎児の出生前に法定代理人(両親)が胎児を代理することは出来ません。また、胎児が死産であった時にも請求権はありません。
まとめ
今回は生まれてくる子供との親子関係があるのかないのか、また生まれてくる胎児の権利について説明しました。嫡出子の推定や認知、胎児の権利など複雑で専門的な言葉が多いので、状況を整理しながら確認しましょう。嫡出子や認知、胎児の権利の全般に言えることは、子どもの権利を守るということにあります。親との関係を確定し身分を持ち、相続などの権利を主張できるようになるため、子どものためにも認知などは積極的に行ってほしいと思います。
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