【不倫相手に貢いだものは返してもらえるのか?不当利得について】~行政書士試験合格者が分かりやすく解説~

民法

皆さんはもし配偶者の不倫が発覚した場合、配偶者が貢いでしまった物の返還請求をすることが出来ると思いますか??民法では公序良俗に反した行為は無効である(民法90条)とされているため、これによって給付したものは不当利得として返還請求が出来るように思われます。しかし、この請求を認めると、民法が反社会的な行為をした者(配偶者)を救うことになるため妥当ではありません。そこでクリーン・ハンズの原則のもと、不法行為の原因のために給付した者は、自らその無効を主張して法的救済を求めることは出来ません。(民法708条)
この記事では不当利得・不法原因給付について説明します。なお、行政書士は行政書士は争いのある法律行為は行えませんのであしからず。
この記事は、法律に興味がある方、行政書士試験の合格を目指す方などに参考になる内容になっています。

不当利得とは

不当利得とは法律上正当な理由がないにもかかわらず、他人の財産または労務から利益を受け、これによってその他人に損失を生じさせることです。この場合、受益者に利益を保有させることが正義・公平の観念に反することからその利益を損失者に返還させて公平を図ることを目的にしています。

要件

①他人の財産または労務によって利益を受けたこと
「利益を受けた」とは財産が増加した場合や減少を免れた場合も含みます。

②他方に喪失があること。
利得と損失の均衡を図るため、他人の財産または労務によって利益を受けたとしても、相手方が損失を生じていなければ不当利得になりません。

③受益と損失との間に因果関係があること。
社会通念上相当な因果関係が認めれる必要があります。

④法律上の原因がないこと。
受益者に利得を保有させることが、実質的観点から正義・公平の観念に反する状況のことです。

効果

損失者は、受益者に対して不当利得返還請求をすることが出来ます。その返還の範囲は受益者の善意か悪意かによって変わります。

受益者が法律上の原因を欠くことを知らなかったとき(善意)、受益者はその利益の存する限度で返還義務を負います。(現存利益です。)

受益者が法律上の原因を欠くことを知っていたとき(悪意)、その受けた利益に利息をつけて返還する義務を負い、損害があるときはその賠償もしなければなりません。

不法原因給付

不法原因給付とは、不法な原因のために給付を行った者が、その給付した物の返還を請求することが出来ないという法律関係を言います。例えばこの記事の冒頭にもお話した不倫関係や、不法なギャンブル、殺人契約など公序良俗に反し無効であるにも関わらず、不当利得の返還として返還を請求することは出来ないと言うことです。もっと簡単に言うと不法な賭けごとで100万円を渡し、不当利得だから返還して欲しいとは言えないということです。

要件

①不法の原因があること。
不法とは公序良俗に反することを言います。

②給付がなされること。
給付をしたといえるためには、相手方に終局的な利益を与えたといえる場合でなければなりません。

③不法の原因が受益者のみに存しないこと。
不法の原因が、給付者・受益者の双方に存する場合でも、受益者の不法の方が著しく大きい場合には、不当利得返還請求が認められることがあります。

クリーン・ハンズの原則とは

公平を求めて裁判所に訴える者は、自分の手が綺麗でければならない(汚れた手の者は法の保護に値しない)という原則です。民法の原則である、信義則(権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。)にも深く関わる考え方です。

具体的な状況でさらに理解

不倫の場合

①配偶者が愛人との関係維持のため、自己の有する未登記建物を愛人に贈与し、これを引き渡した。この場合は配偶者は愛人に対し不当利得として建物の返還請求することは出来ません。未登記である建物を引き渡した時点で給付があったものとみなされます。

②配偶者が愛人との関係維持のため、自己の有する未登記建物を愛人に贈与し、これを引き渡した。配偶者が愛人に引き渡した建物に配偶者名義の保存登記をしたとしても、配偶者は愛人に建物の返還請求は出来ません。

③配偶者が愛人との関係維持のため、自己の有する未登記建物を愛人に贈与し、これを引き渡した。贈与のいきさつにおいて、配偶者の不法行為が愛人の不法行為に比してきわめて微弱なものであった場合は、不当利得による返還請求が認められます。

④配偶者が愛人との関係維持のため、配偶者名義の建物を愛人に引き渡した。愛人から配偶者に移転登記の請求をされたとしても拒否することが出来ます。既存登記の建物にあっては、その占有の移転のみでは足りず、所有権移転登記手続きが履践されていることが必要です。 

まとめ

今回は不当な利益を受け取った場合の返還についてと、不法原因による給付があった場合の返還について説明しました。不当利得とは簡単に言うと間違って利益を与えてしまったため、その分を返してもらう制度です。こういった制度があると、もし万が一の時も安心できますよね。次の不法原因による給付は、悪意のある人の取引は認められず、保護することも出来ないといった趣旨になります。当然と言えば当然ですよね。不法なことをしって取引はしてはいけないということですね。

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