【遺言って聞くけどどんな制度??】~行政書士試験合格者が解説~

民法

今回の記事も、相続にまつわる民法の知識について記事を書きたいと思います。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今後とも宜しくお願いいたします。
ではさっそくですが、今回は相続時における遺言について説明していこうと思います。相続は原則として自由です。そのため、遺言を残すことで、任意の相手に自分の財産を多く渡すことが可能になります。この遺言にはさまざまなルールがありますので、今回は遺言のルールについて記事を書いていきたいと思います。

遺言とは

独身の息子に他の相続人よりも多くの財産を残したいとか、相続権の無い内縁配偶者にも財産を与えたいといった事情がある場合、被相続人は遺言という形で、特定の相続人に法定相続分と異なる相続分を指定したり、法定相続人以外の者にも財産をあたえることができます。遺言は一般的には財産の分け方を指定するイメージを持つことが多いのですが、その他にも認知や後見人・後見監督人の指定、推定相続人廃除請求、廃除の取消し、遺言執行者の指定、遺産分割の禁止などをすることも可能です。

遺言を書くことが出来る条件

遺言を書くには、制限行為能力に関する規定は遺言には適用されず、15歳に達した者は、単独で有効に遺言をすることができます。成年被後見人も成年後見人の同意を得ることなく遺言をすることができますが、事理弁識能力を回復している時に医師2人以上の立ち合いのもとに行うことが必要です。なお、被保佐人、被補助人は単独で遺言することができます。

遺言の方式

遺言は厳格な様式性の要求される行為であり、法定の方式に従わない遺言はその効力を生じません。また、2人以上の者が同一の証書で遺言とすることができません。

自筆証書遺言

遺言には、全文、作成の日付、氏名を遺言者が自署し、署名の下に押印する方式です。押印は指印でも可能です。証人も不要です。そのため偽造、変造、隠匿などの問題が生じることがあるので注意が必要です。日付については「吉日」という書き方は無効です。
遺言には財産目録を作成しますが、自署でなくても構いません。つまり財産目録についてはパソコンや第三者による代筆でも作成が可能です。また、不動産登記や預貯金債権の写しを添付することもできます。この場合、目録ページに遺言者の署名押印が必要になります。
自筆証書遺言には法務局での保管制度も利用出来るため、偽造、変造、隠匿などの問題にも対処できるようになりました。

公正証書遺言

証人2人以上の立ち合いのもと、遺言者が遺言の内容を公証人に口授(口頭で伝える)し、これを公証人が筆記し、遺言者及び証人に読み聞かせた上、遺言者、証人が各自、署名押印する方式です。公証人が関与するため信用性が高く、偽造、変造されるおそれはありません。また、遺言の原本が公証人役場で保管されます。問題点は利害関係人の請求でいつでも閲覧できるため秘密の保持にはなりません。

秘密証書遺言

遺言者がその証書に署名押印したうえ証書を封じ、その証書に用いた印章で証書に封印し、これを公証人および2人以上の証人の前に提出し、自分の遺言書である旨を申述した後、公証人が提出年月日と遺言者の申述を封書に記載し遺言者、証人、公証人が各自署名押印する方式です。

遺言の効力

遺言は遺言者が死亡した時からその効力が生じます。遺言で特定の人に無償で財産を与える事を遺贈といいます。遺贈には包括遺贈と特定遺贈があります。なお遺贈の受遺者が遺言者の死亡以前に死亡した時は遺贈の効力は生じません。

包括遺贈

遺言者が遺産の全部、何分の1というように遺産の割合を示して遺贈することです。包括遺贈の受取人は他の相続人と共同して相続財産を承継し、遺産分割協議に参加も可能です。この場合、債務も遺贈の割合で相続することになります。そこで、受遺者には遺贈を承認するか放棄するかを自由に決めることができます。

特定遺贈

遺言者がある建物1棟や預貯金の銀行指定など特定の財産を示して遺贈することです。受遺者はいつでも遺贈を放棄することができます。

遺言の執行

遺言の内容を実現することです。まず遺言書の検認の手続きが必要となります。この検認は相続を知った後遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して検認を請求しなければなりません。公式証書遺言や法務局で保管されている遺言には検認を受ける必要はありません。

遺言の撤回

遺言は遺言者の最終意思が尊重されます。そのため遺言者の気が変わったときには遺言を自由に撤回することができます。撤回すると将来に向かって失わせることをいいます。
また、法定撤回という考え方があり、遺言者が遺言の趣旨と抵触する行為をした場合、本人の最終意思を反映したとは考えられないため抵触した部分は撤回したものとみなされます。

まとめ

今回は遺言について大まかなルールを説明しました。今後の記事では遺言を書くにあたっての、注意事項や公正証書遺言について更に詳しく記事を書いていけたらと思います。また、相続の際に被相続人が気が付いていない資産の調査の仕方や、相続人を戸籍でどう調べるのかなど順次記事にしていきますので、参考にしていただければと思います。

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