【無権代理行為があった時の相続について】~行政書士試験合格者が解説~

民法

今回から行政書士試験の民法の知識に加え、実務で使えることを記事にしていこうと思います。当初よりこのブログはインプットした知識をアウトプットする場と考えていました。
今回行政書士試験に合格したため、行政書士としての実務を勉強し、その知識を記事に残していければと考えています。
今回の記事は、相続にまつわる民法の知識について今までの記事で詳しく紹介していなかった内容について記事を書きたいと思います。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。今後とも宜しくお願いいたします。
ではさっそくですが、今回は相続時に関わりのある民法総論、無権代理について説明していこうと思います。

無権代理とは

代理権がないにもかかわらず、代理権があるように偽り代理権を行使した場合をいいます。相続関係でいうと、父の不動産に対して代理権がないにも関わらず、代理権を偽り売買契約を行った場合をいいます。この場合、父が亡くなった後の相続問題が生じます。この際に無権代理の知識が必要になってきます。

①無権代理行為は原則として、本人に効果が帰属しない
代理人として行為した者に代理権がなかった場合、その代理権の効果は本人に帰属しません。これは無権代理者が勝手に代理権し土地を他人と売る契約をした場合、代理権を勝手に使われた本人が相手方に対して自分の土地を譲り渡す義務が生じるとすれば、本人にとっては迷惑な話となります。たとえ、相手方が無権代理者に代理権があると信じ込んでいたとしても契約は成立しません。

②本人が追認すれば、本人に効果が帰属します。
本人が無権代理行為を後から認めれくれれば、無権代理の行為は契約がされた時にさかのぼって本院に帰属します。なお、相手方も思った通りの結果となるため問題は生じません。つまり、追認とは無権代理行為を本人が自分へ効果の帰属を認めるということです、追認によって無権代理の相手方の取消権は消滅します。
追認は相手方にしなければなりません。つまり無権代理人に追認しても相手方が知らなければ追認は成立せず、相手方は取り消すことも出来ます。

無権代理人の相手方の保護

本人が追認をしてくれない限り、契約が成立せず売買契約により手に入れれると信じていた相手方は思いがけない不利益を被る可能性があります。無権代理人においては本人を保護するとともに相手方の保母も考慮する必要があります。

①相手方の催告権
相手方は本人に対し無権代理行為を追認するかどうかを相当の期間を定めて催告することができます。催告期間内に本人からなんの音沙汰もないときは、追認を拒絶したものとみなされます。そのため相手方はあきらめることになります。この催告は相手方が、無権代理であることを知っていた場合でも行うことができます。

②相手方の取消権
無権代理行為の善意の相手方は無権代理行為の取消権が認められます。この取消権は本人が追認の意志表示をする前に行使しなければなりません。また、取消権を行使すると無権利代理人への責任追及することは出来なくなります。催告権との違いは善意の場合にしか取消できないということです。なぜなら、無権代理と分かっていながら契約したため取り消す必要がないからです。

③無権代理人の責任
他人の代理人として契約した者は、自己の代理権を証明したとき、または本人の追認を得たときを除き、相手方の選択に従い相手方に対して履行または損害賠償の責任を負います。つまり無権代理人は勝手に他人の代理人名義を使って契約をした以上、それなりの落とし前をつけなればなりません。
この責任追及を出来ない場合があります。
・相手方が無権代理と知っていたとき
・相手方が過失によって無権代理と知らなかったとき。ただし、無権代理人が自分に代理権がないことを知っていたときは責任追及できます
・無権代理人が行為制限を受けていたとき。これは未成年者や成年被後見人、保佐人などである場合には責任追及はできません。ただし、不法行為にあたる可能性があります。

無権代理と相続

相続が開始すると、相続人は被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。そうすると無権代理行為の後、追認あるいは追認拒絶がなされる前に本人が無権代理人を相続し、または無権代理人が本人を相続したような場合に「本人としての地位」「無権代理人としての地位」同一人に併存するような関係が生じます。このような場合について判例の結論がありますのでご紹介します。

①無権代理人が本人を単独相続した場合、無権代理行為は当然に有効となります。無権代理人が相続を利用してやっぱりやめたと言うことは信義則に反する結果になるからです。

②本人が無権代理人を単独相続した場合、無権代理行為が当然に有効となることはなく、本人は無権代理行為を追認または追認を拒絶することが出来ます。これは本人がそもそも無権代理行為を行われたため、追認するかどうかの判断があるからです。なお、無権代理人の責任は本人が承継することになります。

③無権代理人が本人を共同相続人とともに共同相続した場合、共同相続人全員が共同して追認しない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても無権代理行為は有効とならない。

④相続人が無権代理人と本人の両方を相続した場合、相続の順序に従えば、無権代理人が本人を相続した場合と同一視できることを理由に、相続人が本人の資格で無権代理行為の追認を拒否する余地はないとしています。

まとめ

民法の代理権の中に無権代理という項目があります。その中で特に重要になってくるのが、この相続時の無権代理行為をどう取り扱うかということです。実際に起こった判例を基に解釈がされており、状況別に判断が異なりますので注意していきましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました