【相続人が放置している空き家ってどうなるの??】~行政書士試験合格者が解説~

相続

今回の記事も相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
前回まで相続に関する知識について記事を書いてきました。今回は相続人がいても連絡が取れなかったり、トラブルがあり相続の分割が出来なかった、価値がなくそのままになった空き家に対する対策についてご紹介したいと思います。
この記事を読むことで空き家の対処法について知ることができます。

空き家とは

「空き家」とは、一般的には「誰も住んでいない家」のことをいいます。平成27年(2015年)5月に全面施行された「空家等対策の推進に関する特別措置法(以下「空家法」という。)」第2条第1項で定義される「空家等」は、「概ね年間を通して居住やその他利用がされていない建築物(住宅に限らない)」を対象としています。
また、総務省が実施している「住宅・土地統計調査」では、空き家を次の4種類に分類しています。

  1. 売却用の住宅…新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅
  2. 賃貸用の住宅…新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅
  3. 二次的住宅…別荘などの普段は人が住んでいない住宅
  4. その他の住宅…1~3以外の人が住んでいない住宅で、転居・入院などで長期不在の住宅や取り壊し予定の住宅など

このうち、「売却用の住宅」、「賃貸用の住宅」、「二次的住宅」の空き家については、別荘などとして現に使用されていたり、売却や賃貸のために管理されています。問題のある空き家は「その他の住宅」に分類される空き家で、現に人が住んでおらず、長期にわたって不在であり、そのまま放置される可能性が高いといえます。「その他の住宅」は定期的な利用がされず、管理が不十分な状態となりがちであるため、その増加は近年大きな社会問題になっています。
「住宅・土地統計調査」(総務省)によれば、「その他の住宅」の空き家は、平成10年(1998年)から平成30年(2018年)の20年間で、約1.9倍の182万戸から347万戸に増加しており、今後も急速に増加していくと予想されています。

空き家の理由

「その他の住宅」に分類される空き家の発生原因は、①居住者の死亡や転居、②実家を相続した子などが居住しない③解体費用をかけたくない④建物があると固定資産税が安くなるなど様々です。
また、生まれ育った家に愛着があるため売却をためらったり、将来親族の誰かが使うのではないかと考えたり、他人が住むことに対する抵抗感があって賃貸にも出さなかったりして、居住可能な住宅であるにもかかわらず、結果的に空き家になってしまうケースもあります。

空き家を放置するリスク

空き家は、所有者だけの問題ではなく、近隣住民にも大きな影響を与えます。
「そのうちどうにかしよう」と考えて放置していると、家屋の状態が悪くなり、近隣に迷惑をかけてしまいます。

①近隣住民に迷惑がかかる

家屋は、適切な管理がされないと劣化が早く進みます。放置された空き家は、「外壁材や屋根材の落下」、「家屋の倒壊」など保安上危険な状態となるほか、「ごみの不法投棄」、「悪臭」、「ねずみや野良猫、害虫などの繁殖」、「雑草の繁茂」など衛生面や景観の悪化などをもたらし、地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼします。
また適切に管理がされていない空き家は「不審火や放火」、「不審者の出入り」など地域の防犯性が低下する可能性もあります。また、外壁材や屋根材の落下、火災などによって通行人や近隣の家屋に損害を与えてしまうと、損害賠償責任を問われる可能性もあります。

行政に強制的に取り壊される

空家法では、次の状態が1つでも当てはまれば、自治体から「特定空家等」と認められることになります。

特定空家等
(1)倒壊など著しく保安上危険となるおそれがある状態
(2)アスベストの飛散やごみによる異臭の発生など、著しく衛生上有害となるおそれがある状態
(3)適切な管理がされていないことで著しく景観を損なっている状態
(4)その他、立木の枝の越境や棲みついた動物のふん尿などの影響によって、周辺の生活環境を乱している状態

「特定空家等」に認定されると、自治体は所有者に適切に管理をするように助言や指導を行います。それでも改善が見られない場合は勧告や命令を行います。所有者が命令に従わなければ、最大50万円以下の過料に処される場合があります。(空家法第14条、第16条)

税金の負担が増える

住宅やマンションなどの居住できる建物の敷地である「住宅用地」には、特例措置が適用されるため、固定資産税の課税標準額は、面積200m2以下の部分までの住宅用地(小規模住宅用地)は6分の1、小規模住宅用地以外の住宅用地は3分の1に軽減されます。しかし、空家法に基づく勧告を受けた特定空家等の敷地や、居住のために必要な管理がなされていない場合などで今後居住する見込みがない空き家の敷地には、特例措置は適用されません。

空き家の対策

上記の問題が起きないよう、空き家を放置せずに対策することが重要になります。今回はどのような対策方法があるのかご紹介します。

空き家について相談する

自治体によっては空き家の相談窓口を設置し、空き家の所有者のニーズにあった専門家や事業者等の紹介などを行っている場合があります。空き家を所有していて、あるいは、空き家を相続する予定があり、何とかしたいものの、どうしたらいいか分からない、何からすべきなのか分からない、どこに相談すればいいのか分からないなどのお悩みなどがある場合は、まずは自治体に相談をしてみましょう。

空き家バンクに登録する

空き家を「売りたい・貸したい」と考えているなら、不動産業者に相談するだけなく、「空き家バンク」に登録しておく方法があります。空き家バンクは、全国の約7割(令和元年10月アンケート)の自治体に設置されています。空き家バンクに登録しておけば、空き家を「買いたい・借りたい」人が登録された物件の中から自分に合ったものを検索できるので、申込みをしてきた人に空き家を売ったり貸したりすることができます。
全国地方公共団体空き家・空き地情報サイトリンク集

空き家をリフォームする

空き家を「売る」「貸す」などの場合、事前にリフォームをすることも考えられます。ただし、一言で「リフォーム」といっても「店舗として活用したいので、耐震性を高めたい」「住宅として貸したいので、見栄えをよくしたい」など、目的によって内容は様々です。まずは目的に応じてどんなリフォームを検討すべきなのか、事業者や自治体と相談をしましょう。
各市町村が実施する助成金等もありますので、「○○市 住宅 補助」で検索したり、「地方公共団体における住宅リフォームに係わる支援制度検索サイト」を利用したりして調べることができます。

空き家対策に関する税制特例:空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)

被相続人が居住していた家屋及びその敷地等を相続した相続人が、相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに、その家屋(その敷地等を含む。)又は家屋取壊し後の土地を譲渡した場合、一定要件を満たせば、その家屋又はその土地等の譲渡所得から3,000万円までが控除されます。令和5年(2023年)12月31日までの譲渡が対象です。

適用要件
①相続開始の直前(老人ホーム等に入所の場合は入所の直前)まで被相続人の居住の用に供されていて、かつ被相続人以外の居住者がいなかったこと。
②相続開始から譲渡の時までに事業の用、貸付けの用、又は居住の用に供されていないこと。
③耐震基準を満たした家屋又は取壊しをした後の土地を譲渡していること。
④昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋であること。
⑤相続開始の日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに譲渡したこと。
⑥譲渡価格が1億円以下であること。

まとめ

今回は相続に関する問題、空き家対策についてご紹介しました。空き家になる理由はさまざまですが、放置していると費用面や近隣トラブルなどの問題が起こります。そのため、空き家が発生したら、売却する、賃貸するなど早めの決断をする必要があります。どうしていいか分からない場合は、市町村役場で相談してみましょう。

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