【遺産分割協議書の作成する方法】~行政書士試験合格者が解説~

相続

今回の記事も相続にまつわる知識について書いていきます。相続実務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、相続分野に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
前回は遺言書の公正証書遺言について解説しました。今回は遺言が無かった場合に行う遺産分割協議書の作成について解説していきたいと思います。
この記事を読むことで遺産分割協議書の手続き手順について知ることができます。

相続の順序

相続が起こった時に遺言書がない場合は相続人を確定し、相続財産を調査します。その後、相続放棄をするのか、遺産を分割するのかを決めていきます。今回の記事では遺産分割協議について解説していきます。

遺言書がない場合、相続人たちは遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。その協議で合意した結果をまとめた書類が、「遺産分割協議書」です。誰がどの財産を相続するか、ということが細かく書かれています。
遺産分割協議書の作成に期限はありません。ただ相続税の申告期限が「相続開始を知った日の翌日から10か月以内」と定められています。

遺産分割協議書の書き方に法的な決まりはありません。パソコンでも手書きでもかまいません。利用する用紙やペンなども自由です。

実際の書類例

被相続人の情報を記載する

まずは「遺産分割協議書」というタイトルを書き、「被相続人(死亡した人)」の情報を記載しましょう。被相続人については、氏名、本籍地、最後の住所地、生年月日、死亡年月日などを書くといいでしょう。

日付を入れる

遺産分割協議書には、必ず「日付」を入れなければなりません。相続人全員が署名押印した日付を記載しましょう。郵送によって相続人が順番に署名押印する場合、最後の相続人が署名押印した日付を記載しましょう。

相続人全員が署名押印

遺産分割協議書を完成させるには、相続人全員が署名押印しなければなりません。1人でも署名押印が抜けていると遺産分割協議書が完成しません。押印に用いる印鑑は「実印」にするようお勧めします。理由としては相続登記や預貯金の払い戻しなどの手続きの際、実印でないと受け付けてもらえない可能性があります。

契印を押印する

複数ページになる場合、簡単に差し替えができてしまい、内容を変更されてしまうリスクが発生するため、遺産分割協議書が複数ページに及ぶ場合には「契印」しなければなりません。契印とは、ページとページの間にまたがる押印のことをいいます。
なお相続人全員が契印する必要があり、利用する印鑑は「署名押印」に使用したものと同じでなければなりません。

将来発見された遺産の分け方について

遺産分割協議が成立した後に別の遺産が発見された場合に備えて、新たに発見された遺産の分け方も決めておくとよいでしょう。上記の例においては「新たに発見された遺産は配偶者が取得する」内容としています。
もしも発見されたときに相続人全員であらためて協議する内容にしたい場合には「本遺産分割協議の成立後、上記に記載した以外の遺産が新たに発見された場合には、相続人全員が協議し、取得者を決定する。」としたり、「法定相続分に従って分配する」とすると記載しましょう。

不動産の書き方

不動産を相続する場合には、相続される不動産を特定しなければなりません。例のように、1筆ずつ「不動産全部事項証明書」の「表題部」を引き写して記載しましょう。不動産全部事項証明書の「地番」表示は「住居表示」とは異なるため注意してください。
また土地つきの戸建ての場合、「土地」と「建物」について別々に記載する必要があります。

預貯金の書き方

預貯金を相続するときには、以下の内容を記載して特定します。なお預金残高についても特に書く必要はありません。
金融機関名、支店名、口座の種類(普通預金、定期預金などの種類を明らかにします。同一金融機関の同一支店の口座であっても複数の種類の預金があるケースでは別々に記載しなければなりません。)、口座番号を記載しましょう。

株式等有価証券の書き方

株式等の有価証券については、内容(証券の種類・銘柄・数量)のほかに、証券会社名、支店名、口座番号、口座名義を記載しましょう。

借金・債務の書き方

借金等の債務はマイナスの資産であり、プラスの資産ではないため遺産分割によって取得することはできません。もっとも、トラブル防止のために、誰が借金等を負担するかを記載することが望ましいです。そのため、誰が負担するかということを明記するとよいでしょう。

生命保険金や死亡退職金は「受取人固有の財産」なので、遺産分割の対象になりません。従って、これらを受け取った人がいても遺産分割協議書に記載する必要はありません。

遺産分割協議書が完成したら、相続人が各自1通ずつ所持します。この協議書によって、各相続人が相続した財産の名義変更を行います。パソコンで作成した場合、人数分の部数を印刷しましょう。

遺産分割協議書が完成したら、それを使って名義変更などの相続手続きを進めます。
①相続税の申告②不動産の名義変更③預貯金の名義変更、解約払戻し④株式の名義変更⑤車の名義変更などさまざまな書類の添付資料として活用することになります。

遺産分割協議書を守らない相続人がいる場合でも、遺産分割協議自体は有効です。そのため遺産分割協議を守らせるための調停、訴訟や強制執行を行う必要があります。

まとめ

今回は遺産分割協議とその書類の作成方法についてご紹介しました。遺言書がない場合、遺産分割協議によりやっと相続が完了することになります。ただし、協議が整わない場合は、裁判にまでなりかねないため出来れば話し合いで上手くまとめたいですね。

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