【成年後見人で知っておきたい消費者契約】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は前回に引き続き、成年後見人が知っておきたい消費者契約について解説します。成年後見人には契約の取消権がありますが、事案によってはトラブルになり後見人1人の力ではどうしようもない事案が出てきます。そんな時には消費者契約法に基づく団体に協力を求めることも1つの手段です。
今回の記事を読むことで消費者契約法とその団体について知ることができます。

成年後見制度の取消権

成年後見制度でも契約の取消権がありますので、類型に分けて確認しましょう。

成年後見人

成年後見人の取消権については、民法第9条に規定されています。

民法第9条
「成年被後見人の法律行為は、取り消すことができる。ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでない。」

成年後見人が、成年被後見人に対して、「~を買って良いですよ」と特定の法律行為に対して同意をしたとしても、取り消すことができるとされています。

保佐人

保佐人は、民法13条1項記載の重要な行為と家庭裁判所が定めた行為について同意権・取消権を持っています民法13条1項記載の重要な行為は、以下のとおりです。

1 元本を領収し、又は利用すること。
2 借財又は保証をすること。
3 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
4 訴訟行為をすること。
5 贈与、和解又は仲裁合意(中略)をすること。
6 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
7 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
8 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
9 民法602条に定める期間を超える賃貸借をすること。

保佐人は、上記の行為については、常に「取消権」を持っています。被保佐人が上記の行為をしようとする場合は保佐人の同意が必要となり、保佐人の同意を得ていない場合、その行為は取り消されることがあります。また、保佐人は、家庭裁判所の決定により、以上の行為以外にもと「取消権」を持つことがあります。

補助人

補助人は、家庭裁判所が特に定めた場合に限り「取消権」を持っています。ただし、「取消権」を設定できる行為は、民法13条1項に書かれている行為(上記の行為)のうちの一部に限られます。補助類型の場合、民法13条1項に書かれている行為以外について「取消権」を設定することはできません。また、家庭裁判所が「取消権」を設定するためには、ご本人の同意が必要です。

任意後見人の場合

任意後見契約に基づいて就任する任意後見人には「同意権」「取消権」はありません。任意後見契約は、その効力が発生しても(任意後見人が選任されても)権限が制限されることはありません。任意後見と法定後見では「同意権」「取消権」の扱いが大きく異なるので注意が必要です。なお、任意後見人は、任意後見契約の中で定めた範囲内の「代理権」を持っています。

このように成年後見制度によっても取消が出来ます。しかし、契約の中にはトラブルになる事も多く、事案によっては専門家である消費生活センターなどの力を借りる必要も出てきます。

消費者契約法とは

悪徳商法や勧誘によるトラブルからあなたを守るための法律です消費者であるあなたが、事業者の不当な勧誘によって契約をしてしまったとき は、その契約を取消しすることができます。また、消費者であるあなたの権利を不当に害するような契約内容だった場合も無効になります。事業者の不当な勧誘や不当な契約条項があった場合、消費者が契約の取り消しや契約条項の無効を主張できるという法律が、消費者契約法です。

消費者契約法に基づく契約の取消しと無効

取消しができる契約は、

① 嘘を言われた(不実告知)
② 必ず値上がりすると言われた等(断定的判断の提供)
③ 不利になることを言われなかった(不利益事実の不告知)
④ お願いしても帰ってくれない(不退去)
⑤ 帰りたいのに帰してくれない(退去妨害)
⑥ 通常の量を著しく超える物の購入を勧誘された(過量契約)
⑦ 就職セミナー商法等(不安をあおる告知)
⑧ デート商法等(好意の感情の不当な利用)
⑨ 高齢者等が不安をあおられる(判断力の低下の不当な利用)
⑩ 霊感商法等 (霊感等による知見を用いた告知)

なお、消費者契約法に基づく契約の取消権は、提供されていた情報が虚偽であることを知った時や困惑の状態が解消された時から1年間行わないとき、または契約締結の時から5年を経過したときに時効により消滅します。単に「説明がなかった」とい うことでは取消しはできませんので、疑問な点はあいまいにせず、事業者に確かめる こと、また、実際に取消しを行うには、内容証明郵便などを使うことが必要です。

また、無効となる契約条項は、次のとおりです。

① 事業者は責任を負わないとする条項
② 消費者はどのような理由でもキャンセルできないとする条項
③ 成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項
④ 平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項
⑤ 消費者の利益を一方的に害する条項

消費者団体訴訟制度

消費者被害は、同じような種類の被害が多数の消費者に生じる特徴があります。こうした消費者被害の未然の防止、拡大防止のため消費者団体訴訟制度があります。民事訴訟の原則的な考え方では、被害者である消費者が、加害者である事業所を訴えることになります。しかし、①消費者と事業者との間には情報量の質・量・交渉力の格差があること、②訴訟には時間・費用・労力がかかり、少額賠償の回復に見合わないこと、③個別のトラブルが回復されても、同種のトラブルがなくなるわけではないことなどから内閣総理大臣が認定した消費者団体(適格消費者団体)に特別な権限を与えたものです。
具体的には、事業者の不当な行為に対して、 適格消費者団体が不特定多数の消費者の利益を擁護するために、差し止めを求めることができる制度 (差止請求)と、不当な事業者に対して、適格消費者団体のなかから内閣総理大臣が新たに認定した特定適格消費者団体が、消費者に代わって被害の集団的な回復を求めることができる制度(被害回復)があります。成年後見人等としては、成年被後見人等が不当な勧誘や契約条項などによる消費者トラブルにあったときは、各地の消費生活センターに相談するなど速やかな対応が必要です。

まとめ

今回は成年後見制度の取消権と消費契約法による取消についてご紹介しました。どちらも消費者である成年被後見人を守る制度となっているので、知っている方がいいでしょう。

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