【成年後見監督人の業務とは】~行政書士試験合格者が解説~

成年後見制度

今回の記事も成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務知識の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回の記事は前回に引き続き、成年後見制度の後見監督人の業務について解説します。成年後見人はイメージが付きやすいですが、監督人って具体的にはどんな仕事をしているの?って思われている方もいると思います。
今回の記事を読むことで成年後見人の監督人の業務を知っていただければと思います。

成年後見監督人の業務とは

まず、後見監督人に就任した人は、一般的に要求される程度の注意義務(善管注意義務/第644条の2)をもって、下記の仕事をこなさなければなりません。

財産調査への立会い(民法第853条2項)

成年後見制度を開始すると、後見人は速やかに被後見人の資産状況を調査し、その内容をまとめた「財産目録」を作成しなければなりません。後見監督人が選ばれたケースでは、目録作成に監督人が立ち会わなければ不備扱いになります。

債務に関する報告受領(民法第855条2項)

後見人と被後見人が利益相反関係(一方の利益がもう一方の損失となる関係)にあるのは、基本的に望ましくないと考えられています。特に問題なのは、お金の貸し借りがあるケースです。そこで、後見監督人がつき、かつ後見人が被後見人に対して債務を負っている場合は、財産調査に着手する前に監督人へと報告しなければなりません。

後見人が欠けた時の選任請求(民法第851条2号)

後見人が辞任・解任・死亡などの理由でいなくなってしまうのは、当然被後見人にとって問題です。後見監督人がいれば、万一の時も、遅滞なく次の後見人選任を家庭裁判所に請求してもらえます。

急迫の事情がある場合の処分(民法第851条3号)

後見人がいなくなるケース以外にも、不測の事態が起き、被後見人の生活が脅かされる可能性があります。急を要する事態が発生した時は、後見監督人の判断で必要な処分を行ってもらえます。

利益相反にあたる行為の代表(民法第851条4号)

後見人は基本的に、各種手続きについて被後見人を代理できます(保佐人・補助人・任意後見人は原則代理不可/詳しくは後述)。しかし、利益相反関係が生じる場合は別です。
例えば、「家族が亡くなり、後見人と被後見人が揃って相続権を得たケース」が挙げられます。この場合、相続人全員で遺産分割協議を開かなくてはなりませんが、被後見人の代わりに後見人が取り分を主張し決定することはできません。このようなケースでは、通常、被後見人の代理を務めてくれる「特別代理人」を探さなくてはなりません。
しかし、後見監督人がいる場合は、わざわざ特別代理人を探さなくても被後見人を代表してくれます。

後見人の解任請求

監督人がついていても、本記事の始めで触れた「後見人が仕事を放棄してしまった」「被後見人の財産を横領してしまった」などの見過ごせない事態が起こることがあります。以上のように不適切な行動や著しい不正などがあった場合は、監督を受ける人の解任を請求できます(民法第846条・第876条の2第2項・第876の7第2項・任意後見契約に関する法律第8条)。

成年後見監督人の辞任・解任

後見監督人の辞任

後見監督人に正当な事由がある場合、その職を辞任できます(民法第844条・第852条・第876条の3・任意後見契約に関する法律第7条4項)。正当な事由の代表例としては、健康状態の悪化が挙げられます。

後見監督人の解任

当初後見監督人の資質ありと認められたにもかかわらず、後見監督人がきちんとチェック業務を実施してくれないことがあります。このようなリスクに備え、後見監督人に関しても、不適切な行動や著しい不正などがあった場合は解任できるとの規定があります。(民法第852条・第876条の3第2項・第876条の8第2項・意後見契約に関する法律第8条)。

成年後見監督人の報酬

後見監督人に関して言えば、被後見人の財産から報酬を付与できると定められています(民法第862条)。この規定は成年後見監督人に関するものですが、保佐監督人・補助監督人・任意後見監督人にも適用されます。
気になる監督人報酬の額は「報酬付与の審判」で個別に決定され、統一的な基準はありません。
各地の家庭裁判所では、監督事務の難しさに配慮して「被後見人の財産の額」(=管理財産額)を基準の1つとし、後見監督人報酬の目安を、「管理財産額5千万円以下: 月額1万円~2万円」「管理財産額5千万円超: 月額2万5千円~3万円」と取り決めています。

まとめ

今回は前回に引き続き成年後見監督人の業務について書きました。成年後見監督人がいると安心して財産の管理を任すことができますね。また、成年後見監督人が不適切だと解任もできるため、何かあれば家庭裁判所に相談しましょう。

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