今回の記事から相続にも関わりのある成年後見制度についての知識について書いていきます。成年後見事務の記事になります。行政書士を目指し受験されている方はもちろんのこと、行政書士の実務を学びたいと思っている方、開業準備をしている方、成年後見業務に興味がある方に向けて記事を書いていきます。
今回は成年後見人の制度を知る上で、成年後見制度が出来た時代的背景について解説していきたいと思います。この記事を読むことで成年後見人の制度について知ることが出来ます。
成年後見制度概要
成年後見人にはまず行為能力というキーワードが重要です。行為能力とは自ら単独で確定的に有効な意思表示をなし得る能力を言います。物を売ったり買ったりする場合、それが自分にとって有利か不利かを判断できないと損をしてしまうことがあります。そこで判断能力を有しない者については、その者を保護するため、ある一定の制限をする必要があります。このような制限を加えられる者を法律用語で制限行為能力者と言います。この制限行為能力者は①未成年者②成年被後見人③被保佐人④被補助人があります。
制限行為能力者の種類
①未成年者とはみなさんもご存じの通り、18歳未満の成年に達していない者をいいます。1
②成年被後見人は「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者で、家庭裁判所から後見開始の審判を受けたもの」です。
③被保佐人は「精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分な者で家庭裁判所から保佐開始の審判を受けた者」です。
④被補助人とは「精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な者で、家庭裁判所の補助開始の審判を受けた者」です。
これらに該当する方の財産を保護する制度で家庭裁判所が選任された後見人(保佐人、補助人)が財産を管理します。
成年後見制度が求められる背景
(1)高齢社会への対応
日本では急速に高齢化が進んでいることや人口の都市集中化が進んでいることから核家族化、高齢者のみの世帯・高齢者の独居が増えており社会問題となっております。年齢が高まるにつれて認知症の有病率も上昇することがわかっています。今後も高齢社会が進行することで判断能力が低下する方の数が増えることが想定され、認知症高齢者の介護の課題解決が必要となっております。
(2)諸外国における成年後見制度の動向
日本は先進国の中でも高齢化率が高く世界でも注目を集めていますが、成年後見制度の採用は遅かったと言われています。
例えばフランスでは1968年に法律を改正し、従来の禁治産、純金持参の制度を「後見」「補佐」「裁判所の保護」に改めました。
カナダのケベック州では1990年に「後見」「補佐」「補助」の制度に改めています。
ドイツでは1992年に「成年者世話法」が施行され、旧来の行為能力剥奪・制限の宣告、成年者を対象とする後見および障害保護の各制度を全面的に廃止しています。
成年後見制度は、2000年の民法改正から開始された制度です。
成年後見制度が始まる前には、
・禁治産制度
・準禁治産制度
という2つの制度がありました。
禁治産制度とは、心神喪失にある人を保護するために後見人を付ける制度です。
準禁治産制度とは、
・心神耗弱にある人
・浪費癖のある人
などに対して、保佐人の同意がない財産行為を禁じる制度です。
両制度を家庭裁判所から宣告された人は、戸籍に禁治産者、準禁治産者と記載されることから、差別や偏見を生みかねないという問題が指摘されました。
そうした指摘を受け、2000年に民法が改正され、現在の成年後見制度が施行されたのです。
成年後見制度利用状況
2000年に成年後見制度が始まり24年以上が経っておりますがまだ利用が進んでいるとは言えない状況です。
2021年の裁判所の調査によれば、成年後見制度の申立件数は39,809件で、昨年対比で7%増加してます。2021年の裁判所の調査によれば、成年後見制度の利用者数は23万9933人で、昨年対比で3%増加しています。
少しずつ利用が増えているようですが、推定される認知症高齢者が500万人程度いるというデータもありますのでまだまだ少ないと言えると思います。
需要が高いにもかかわらず利用が進まない中、内閣府は成年後見制度の利用促進のため2016年に成年後見制度の利用の促進に関する法律を制定しました。この法律は国、地方自治体、その他の公共団体また国民に対し、成年後見制度利用促進に関する施策を行うべきと規定されています。
2018年には各市町村が策定する成年後見制度利用促進計画の作成手引きとして「地域における成年後見制度利用促進に向けた体制整備のための手引き」が発刊されている状況です。
まとめ
現在超高齢化社会となり、家族の形も変化している中で始まった成年後見人制度ですが、まだまだ利用が進んでいない現状があります。今後さらに高齢化が進むと重要な制度となってきます。そのための今後も利用促進の政策が求められている制度となっています。
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