【困窮状態から脱出しよう】生活困窮者自立支援法について~現役福祉職公務員が分かりやすく解説~

救済処置支援

今回は前回の記事に引き続き生活困窮者自立支援法についてご紹介いたします。まず近年の生活困窮者の状況は新型コロナの影響を受け令和2年から相談件数が3倍以上に増えています。それまでの年度では年間約25,000人程の相談件数が令和2年に約780,000人に増えました。その後令和3年は約550,000人と高い推移を維持しています。困窮する原因は様々と言われていますが、①ひとり親家庭②病気(メンタルヘルスも含む)③高齢者と言われています。そういった状況に対して支援するのが生活保護制度であり、その前段階の生活困窮者自立支援制度です。今回ご紹介するのは①一時生活支援事業②家計改善支援事業③子供の学習・生活支援事業について説明していきます。一時生活支援事業は特殊ですが、家計改善支援事業や子供の学習・生活支援事業については生活の立て直し、貧困の連鎖を防ぐ役目があり今後重要な施策であると思います。

一時生活支援事業

一時生活支援事業は主にホームレスの方を対象とした住居支援の制度です。例えば住み込みの仕事をしており会社を辞めたため家を失ったり、ネットカフェ宿泊や知人の家を転々とし住居が無い方などが対象です。利用するには収入の基準額より少なく、また預貯金も単身であれば50万円以下程度と市町村によって決まりがあります。一時生活支援事業には緊急的に一定期間(原則3カ月以内)、宿泊場所や衣食を提供します。その後の生活に向けて就労支援なども行っていきます。

くまくまさん
くまくまさん

無料で宿泊できます。場所はホテルやマンションの1室を借りていたりします。

家計改善支援

家計状況の「見える化」と根本的な課題の把握を行い、相談者が自ら家計を管理できるように支援します。状況に応じた支援計画の作成や相談支援、関係機関へのつなぎ、必要に応じて貸付のあっせんなどを行い、早期の生活再生をサポートします。主に「相談時家計表」「家計計画表」「ライフイベント表」「キャッシュフロー表」などを作成し家計の立て直しを行っていきます。

家計改善支援には、支援の5つの基本的な柱があります。
①家計の現状を理解してもらう支援②行政窓口に同行し、給付制度の利用や税金、公共料金等の滞納を解消する支援③法律相談に同行し、借金や家賃滞納など債務に関する支援④生活の健全化を図るために必要な貸付をあっせんする支援⑤相談者自身が家計を自ら管理できるようにする支援
 この他、家計改善支援だけで解決できない、障がいや依存症(ギャンブル、アルコール)などの課題を抱える人への支援は、自立相談支援事業所や医療機関などと連携を行います。

子供の学習・生活支援事業

ひとり親家庭や貧困家庭等のこどもが抱える特有の課題に対応し、貧困の連鎖を防止する観点から放課後児童クラブ等の終了後に、ひとり親家庭や貧困家庭等のこどもに対し、児童館・公民館・民家やこども食堂等において、悩み相談を行いつつ、基本的な生活習慣の習得支援・学習支援、食事の提供等を行っています。この制度は市町村でさまざまな取り組みがあります。子ども食堂はニュースで取り上げられているので一度目にしたことがあるのではないでしょうか。

学習支援のA市の事例
(中学生学習支援プログラム)
A市では、NPO 法人の運営するフリースクールで中学生を対象とした学習支援を実施。最初は夏休みに 10 日開催したところ、参加した子どもたちから「楽しいので、学校登校期間も開催してほしい」という声が上がったため、学校登校期間も毎週火・木曜日 16:30~19:00 に開催するようになる。学習指導はマンツーマンで、学校の宿題が基本。ただし、学校の授業についていけない場合は小学生向けのドリルや独自教材を使って学び直しをしたり、特別な学習支援を必要としない中 3 の場合は入試問題を解く場合もある。
学習支援だけでなく、居場所としての機能を重視し、友達同士のつながりや雑談の時間も大切にしている。また、自主性、協調性、社会性の向上を意識して、擬似社会としての小集団の中で挨拶、片付け等の生活習慣が身につくよう心がけており、夏休み、冬休み期間は、皆で買い物に行って昼食を作る場合もある。昼食については、実費を徴収している。

子ども食堂のB市の事例
B市の子ども食堂では、子供が家族以外の大人とコミュニケーションをとる機会になるとともに、学生や地域のボランティアが子供の相手をしてくれたり、お年寄りが赤ちゃんを見てくれたりすることで、その間に親がゆっくり食事を取れるなど、親にとって息抜きの場にもなっています。また、食事だけでなく、食べ終わった後には子供たちはトランプで遊び、親同士はおしゃべりして情報交換する様子も見られ、地域のつながりづくりにも貢献している。

まとめ

今回は生活困窮者自立支援の解説をしました。前回ご紹介した就労準備支援事業、今回ご紹介した①一時生活支援事業②家計改善支援事業③子供の学習・生活支援事業は各市町村が行う任意事業であるためどのような支援があるかは各市町村の窓口に一度問い合わせてみてくださいね。また、相談窓口が市町村役場でなく、社会福祉協議会が行っている場合もありますのでご注意ください。
次回は生活費に困った際に低金利で利用可能な社会福祉協議会が行っている資金貸付制度についてご紹介します。

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