【マンションの賃貸借契約で揉めないために知っておきたいこと】~行政書士合格者が分かりやすく解説~

民法

行政書士試験合格に必要な知識の中から皆さんの日常生活にかかわり合いのある民法についてご紹介していけたらと思います。行政書士は争いのある法律行為は行えませんが、様々な法律を駆使した権利義務に関する書類の作成や事実証明に関する書類の作成を行います。その中で民法とは一般私法であり、人間の社会生活における個人の財産関係や家族関係を規律するルールの役割があります。
今回ご紹介するのは前回ご紹介した賃貸借契約について、さたに深堀して説明していこうと思います。総務省統計局が5年に1度発表している「住宅・土地統計調査」のデータでは19,065が賃貸住宅である状況です。年々賃貸の需要が増えつつあり、行政書士試験でも民法の問題で賃貸契約についての出題が頻出しています。賃貸契約の知識があれば、賃貸契約書の内容を理解することが出来るようになりますので、是非参考にして下さい。
 この記事は、法律に興味がある方、行政書士試験の合格を目指す方などに参考になる内容になっています。

賃貸借契約とは

民法における賃貸借契約とは当時者の一方(賃貸人)がある物の使用・収益を相手にさせることを約し相手(賃借人)がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了した時に返還する契約です。例えば家の賃貸借契約などです。

賃貸人の義務

賃貸人は目的物を賃借人に対して使用・収益させる義務を負います。目的物に生じる必要費や有益費などの費用は賃貸人が負うことになります。使用貸借は無償であるため借主が必要費を負いますが、賃貸借は有償で賃貸人が負います。

必要経費

賃借人が目的物を保存するのに必要な費用を支出したときは、特約がないかぎり賃貸人に対して直ちにその償還を請求することが出来ます。(例:畳の交換や扉・窓の破損などです。)

有益費

賃借人が目的物の改良のため費用を支出したときは、特約がない限り、賃貸契約終了時に目的物の価格の増加が賃貸借終了時に現存する限りで賃貸人の選択に従い、支出した費用又は増加額のいずれかを償還するように請求することができます。(例:壁紙の張替えや建物の増築などです。)

賃借人の義務

賃借人は賃貸人に対して賃料を払う義務を負います。また、用法に従って使用収益を行い、返還する義務があります。賃貸借契約が終了時には原状に復する義務を負います。この際の原状回復には経年劣化は含まれませんが、故意・過失による破損は原状回復費用がかかります。(原状回復費の例:猫の引っ搔いた傷、故意に破損させたトイレの便器、煙草のヤニで黄ばんだ壁紙)(経年劣化の例:窓ガラスのゴムの劣化により歪み、畳の歪)

礼金と敷金

礼金も敷金も入居契約時には支払う初期費用です。

礼金とは

部屋を所有する賃貸人に対して、賃借人がお礼の意味として支払う金銭です。敷金と違って、退去時に返金されることはありません。

敷金とは

賃料債務を担保する目的で賃貸人に対して、賃借人が支払う金銭です。賃貸物の返還を受けた時、または賃貸契約を他の人に譲った際に必要な費用(原状回復費等)を引いて返還しなければなりません。
賃貸人が別の賃貸人に変更した際は、敷金の支払う権利も別の賃貸人に移ることになります。つまり、賃貸人が変更しても賃借人は賃貸契約終了時には敷金の返還を受けることが出来ます。

譲渡

賃貸人の譲渡については、自由に行うことが可能です。賃借人の許可は必要ありません。

賃借人の譲渡は賃貸人の承諾が必要になります。承諾のない譲渡は賃貸人は契約を解除することが出来ます。また所有権に基づく返還請求をすることも出来ます。

転貸

賃貸人から目的物を借りた賃借人が、それを第三者(転借人)に使用収益させることをいう。いわゆる「また貸し」のことです。転貸借されても賃貸人と賃借人の賃貸借関係は残ります。

承諾のある転貸

転借人は賃借人の債務の範囲を限度として賃貸人に対して直接に義務を負います。この場合は転借人の賃料の前払いをもって賃貸人に対抗することは出来ません。賃貸人と賃借人の契約が合意解除された場合は賃貸人から契約解除されませんが、賃借人が債務不履行で解除された場合は、転借人の契約も解除される恐れがあります。

承諾のない転貸

転貸借も賃貸人の承諾がなければ行うことができません。無断転貸が行われた場合には、賃貸人は賃貸契約を解除をすることが出来ます。また、転借人に対しても建物の明け渡しを請求することが出来ます。

第三者に対する対抗力

賃貸借権は登記することが出来ます。登記した時には不法占拠者などに対して妨害請求権を所有者に代位行使することができます。
賃借権が二重譲渡されていた場合は、先に対抗要件を備えた方が優先されます。

仲介手数料の決まり

仲介手数料とは、不動産の売買や賃貸の契約を仲介した会社に支払う手数料のことです。仲介手数料には、宅地建物取引業法によって定められた上限額があります。賃貸の仲介手数料の上限は、貸主・借主合わせて家賃の1ヶ月分+消費税分です。仲介手数料は交渉で安くすることも可能です。

返還の時期

返還の時期は契約によって定められます。なお借主が死亡しても契約は継続し、相続することも可能です。更新は契約成立・更新から50年を超えることは出来ません。また賃借人が賃借物の使用・収益を継続する場合において、賃貸人が更新時期を知りながら異議を述べないときには更新されたものとみなされます。
解約の時期はいつでも申し入れることができます。賃貸人は賃借人が家賃の未払い等の債務不履行がある場合、催告をして契約の解除ができます。また、極端な用法違反をした場合は催告無く解除できます。

まとめ

賃貸契約は特にマンションなど住宅で行われることが多いと思います。賃貸契約書には民法の賃貸契約を元に作られていますので、一度ご自身の契約書を確認するとより具体的に分かると思います。また、特約部分には民法の賃貸契約と違う個別の条件を付していることがありますので、要確認してくださいね。

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